ロータス・エヴォーラよ永遠に MR 2+2のグランドツアラー 500kmの旅 前編
公開 : 2021.12.12 09:45
生産終了を迎えるロータス・エボーラ。発売から10年以上が経過しても衰えない傑作を、英国編集部が再確認しました。
エヴォーラでエラン渓谷を目指す
本来なら、エヴォーラ渓谷を目指したいところだった。熱心なロータス・ファンとして。だが、英国にそんな地名は存在しない。かわりに選んだのは、エラン渓谷までのロードトリップ。生産終了を迎えるエヴォーラを惜しむ場所として、悪くないだろう。
実際のところ、英国西部に位置するウェールズ地方の渓谷は、ロータス・エランとも直接的な結びつきはない。厳密には発音のアクセントの位置も異なる。
しかし、その名前は一致するELANというスペルを持ち、理想的な道が縦横に延びている。筆者は過去にもロータスで聖地巡礼というべき旅をしたことがある。エラン渓谷の中心にはラアアデルという街があり、国道A44号線とA70号線が交差している。
バーミンガムやロンドンなどの日常的な喧騒とは、かけ離れた土地だ。冒険的な気持ちを持った旅行者にとって、心と体を休ませるオアシスのような場所といえる。いささか感傷的な始まりだが、エヴォーラとお別れする思いの表れだと思って欲しい。
今日の旅の最初のミッションは、ラアアデルから少し離れたB4518号線で、フォトグラファーのマックス・エドレストンと落ち合うこと。ダムの建設で誕生した、巨大なカバンコッホ貯水池のそばで。
筆者の自宅は、ロンドン中心部から120kmほど西に離れた、コッツウォルズにある。そこからカバンコッホ貯水池までは、さらに西へ100kmほどの旅。グーグルマップによれば所要時間は2時間半だというから、朝の6時に出発した。
ミドシップで2+2の珍しいレイアウト
外は暗い。キーフォブのボタンを手探りで押し、盗難防止アラームを鳴らさないように注意する。筆者はこれまで個人的にロータスを何台か所有してきたが、アラームが不意に鳴ることが何度もあったのだ。
スタートボタンを押す。静かに3.5L V6エンジンが目を覚ました。高い位置から伸びるアルミ製のシフトレバーをスライドさせ、1速に入れる。しずしずとエヴォーラは早朝の公道へ出た。
1年ほど前にロータスのイベントで短時間の試乗をしたが、筆者がエヴォーラと長時間過ごすのは、恐らく10年ぶり。だが、暗がりの道とは違い、気を使うような馴染みのなさは感じられない。
乗った直後から快適で素直に走る。狭い車線でも扱いやすい。しかし、ヘッドライトとフロントガラスのデフロスターは、少々時代遅れ感がある。結果として慎重にならざるを得なかった。
大きく湾曲したフロントガラス越しに、遠くを見つめる。ランチア・ストラトスで感じた厄介さを思い出す。
エヴォーラがロンドン・モーターショーで発表された時、筆者が強く関心を抱いたのは、ミドシップで2+2という珍しいレイアウトだった。過去にはフェラーリ・ディーノ308 GT4や、モンディアルといった例はあったけれど。
ロータスといえば2シーターのスポーツカー、という概念を破っていた。新しい名前と、高めの価格を正当化するものだった。動力性能や操縦性、乗り心地など、ブランドの特長はすべて受け継いでいた。後に、リアシートを省いた2シーターも選択可能となったが。