ジープ・ラングラー・ルビコン 392へ試乗 6.4Lヘミユニットで476ps ブロンコに対抗

公開 : 2021.12.13 08:25  更新 : 2022.08.08 07:18

オフローダーの代名詞といえる、ジープ。最新JL型にV8エンジンを載せたルビコン 392を英国編集部が評価しました。

フォードブロンコにV8エンジンで対抗

電動化技術の採用に拍車がかかる2021年、ジープはV8エンジンを搭載したラングラーを投入した。遡れば、40年ほど前のCJ型以来、ジープでV8は選べなかった。

CO2削減に対する意識の高まりは、もちろん北米でも同じ。ジープも環境対策に取り組んでいないわけではない。4気筒エンジンに駆動用モーターを組み合わせた、プラグイン・ハイブリッド(PHEV)版のラングラーも販売している。

ジープ・ラングラー・ルビコン 392(欧州仕様)
ジープ・ラングラー・ルビコン 392(欧州仕様)

純EV版のラングラーも、間もなく姿を表す。これだけの努力をしているのだから、大排気量のV8エンジンを少しくらい載せても、バチは当たらないと考えたのかもしれない。あるいは、復活を遂げたフォード・ブロンコへの返答かもしれない。

2021年に小さくない話題を集めた新型フォード・ブロンコだが、ワイルドなボディに搭載するエンジンは、能力に長けた314psのV6。トリムグレードには、ビッグベンドやバッドランズといった、荒々しい名称が与えられている。

少なくとも新しいブロンコは、現代のラングラーが直面した最大のライバル。その戦いを有利にするべく、V8エンジンが投入されたと考えるのが、正しいだろう。

理由はともあれ、ラングラーのフラッグシップ、ルビコンに392が登場した。ちなみに392とは、北米で排気量を表すキュービック・インチでの容量。6.4Lに相当する。

恐らく大量販売をジープは狙っていないと思うが、アニメ・ヒーローのように圧倒的にタフなオフローダーという成り立ちへ、好感を持つ人は少なくないと思う。実際に試乗した印象も良かった。傑作だ。

悪路の走破性を高める即時的なレスポンス

6.4Lという巨大なV8エンジンは、ダッジ・チャレンジャー R/Tスキャットパックに搭載されるものと同じヘミユニット。自然吸気で、最高出力476ps、最大トルク64.8kg-mを発揮する。

そのサウンドは、欧州モデルに積まれるようなツインターボV8が発する滑らかで爽快なものとは異なり、ザラ付いていて古いアメリカ車を彷彿とさせる。迫力や興奮度は間違いなく満点。スポーツエグゾーストも選べる。

ジープ・ラングラー・ルビコン 392(欧州仕様)
ジープ・ラングラー・ルビコン 392(欧州仕様)

非常にたくましく、本気を出せば0-97km/h加速は5.0秒を切るという。ただし、オールテレーン・タイヤを履く都合で、最高速度は159km/hに制限される。

これまでの現行ラングラーが搭載していた直4ターボやV6自然吸気に対する、新しいV8の明確な強みは、悪路を低速で走行する場面での即時的なレスポンスにある。余裕のある大人のオモチャのようなクルマだが、走破性はシリアスだ。

トランスミッションは8速ATで、ルビコンとしてディファレンシャル・ロックを装備。フロント側のアンチロールバーをサスペンションから切り離す機能も付き、タイヤが上下に動く範囲を拡大することもできる。

英国の窮屈な道を運転していると、ステアリングホイールを一気に回して生け垣をなぎ倒し、草地を全開で駆け抜けたいという欲求に駆られてしまう。V8エンジンとタイヤからのノイズが、泥や草と戯れたいといういたずら心をくすぐる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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