ホンダNSX タイプRとNSX-Rへ英国試乗 別格で究極の初代 キモは徹底的な軽量化
公開 : 2021.12.26 13:45
軽量化を突き詰めた、NSX タイプRとNSX-R。モダンクラシックの王者といえる2台に英国編集部が試乗しました。
120kgもの軽量化を実現
初代ホンダNSXは、すべてのオーナーへ本物のパフォーマンスを開放した。スーパーカー開発の方向性を、大きく変化させたといっていい。
ただし、スーパーカーを可能な限り乗りやすくする上で、ドライビング体験に多少の犠牲がなかったわけではない。お買い物袋を載せたいドライバーのなかには、もっとエッジの効いた体験を求めている人が存在することを、ホンダは知っていた。
そんなドライバーの要望へ、ホンダは応えた。1992年11月にリリースされた、研ぎ澄まされたNSX タイプRで。
エンジンの内部構造の精度を高め、一層のバランス向上が図られていたが、当時の日本の自主規制に則り最高出力は引き上げられていない。そのかわりタイプRに施されたのが、徹底的なダイエットだった。
バンパーやドアビームなどを軽いものへ置き換え、エンジンルームとコクピットを仕切るガラスも変更。エンジンカバーはメッシュ素材になり、アルミホイールは1本あたり1kgも軽い新設計の鍛造品が組まれた。
防音材やアンダーシールも省略。サスペンション・サブフレームに補強材が追加され、中空のストラットバーも装備されたが、全体としては軽く仕上がっていた。ノーマルのNSXですら可能な限り軽く設計されていたが、120kgもの軽量化を実現している。
サウンドや乗り心地などすべてが別格
アミール・ハスミ氏が大切にしている、チャンピオンシップ・ホワイトに塗られたタイプRのエンジンを始動させる。3.0L V6エンジンのサウンドが車内を満たすから、ノーマルのNSXとの違いは歴然だ。
アルカンターラで仕立てられた内装と、レーシーな赤いバケットシートが、特別なクルマであることを更に主張する。ホンダが初期のタイプRに用意したトランスミッションは、5速MTのみだった。
マクラーレン・ホンダのF1マシンをモチーフにしたという、チタン製のシフトノブにそそられる。ストロークが短く、気持ちよくコクコクと次のギアを選べる。
通常のNSXとタイプRとの0-97km/h加速時間の差は、1秒もない。ファイナルレシオが4.23:1へ低められ、鋭い加速を助けている。しかし実際に運転すれば、加速力がスーパーカーの動的能力のすべてを表すものではないと、すぐに理解できる。
車高が10mm落とされ、スプリングとダンパー、アンチロールバーを強化。サスペンションの設計自体にも手が加えられており、決定的な違いを生んでいる。通常のNSXも優秀なアスリートかもしれないが、NSX タイプRは間違いなくゴールドメダリストだ。
運転中、ドライバーへ伝わってくるすべてが別格だった。エンジンのサウンド、乗り心地、ステアリングホイールへのフィードバック。NSX タイプRを運転すると、ドライバーの感覚も研ぎ澄まされる。中毒性も相当に高い。