ホンダNSX タイプRとNSX-Rへ英国試乗 別格で究極の初代 キモは徹底的な軽量化

公開 : 2021.12.26 13:45

軽量化を突き詰めた、NSX タイプRとNSX-R。モダンクラシックの王者といえる2台に英国編集部が試乗しました。

120kgもの軽量化を実現

初代ホンダNSXは、すべてのオーナーへ本物のパフォーマンスを開放した。スーパーカー開発の方向性を、大きく変化させたといっていい。

ただし、スーパーカーを可能な限り乗りやすくする上で、ドライビング体験に多少の犠牲がなかったわけではない。お買い物袋を載せたいドライバーのなかには、もっとエッジの効いた体験を求めている人が存在することを、ホンダは知っていた。

ホワイトのホンダNSX タイプR(初代NA1型/1992〜1995年)とレッドのNSX-R(初代NA2型/2002〜2005年)
ホワイトのホンダNSX タイプR(初代NA1型/1992〜1995年)とレッドのNSX-R(初代NA2型/2002〜2005年)

そんなドライバーの要望へ、ホンダは応えた。1992年11月にリリースされた、研ぎ澄まされたNSX タイプRで。

エンジンの内部構造の精度を高め、一層のバランス向上が図られていたが、当時の日本の自主規制に則り最高出力は引き上げられていない。そのかわりタイプRに施されたのが、徹底的なダイエットだった。

バンパーやドアビームなどを軽いものへ置き換え、エンジンルームとコクピットを仕切るガラスも変更。エンジンカバーはメッシュ素材になり、アルミホイールは1本あたり1kgも軽い新設計の鍛造品が組まれた。

防音材やアンダーシールも省略。サスペンション・サブフレームに補強材が追加され、中空のストラットバーも装備されたが、全体としては軽く仕上がっていた。ノーマルのNSXですら可能な限り軽く設計されていたが、120kgもの軽量化を実現している。

サウンドや乗り心地などすべてが別格

アミール・ハスミ氏が大切にしている、チャンピオンシップ・ホワイトに塗られたタイプRのエンジンを始動させる。3.0L V6エンジンのサウンドが車内を満たすから、ノーマルのNSXとの違いは歴然だ。

アルカンターラで仕立てられた内装と、レーシーな赤いバケットシートが、特別なクルマであることを更に主張する。ホンダが初期のタイプRに用意したトランスミッションは、5速MTのみだった。

ホンダNSX タイプR(初代NA1型/1992〜1995年/英国仕様)
ホンダNSX タイプR(初代NA1型/1992〜1995年/英国仕様)

マクラーレン・ホンダのF1マシンをモチーフにしたという、チタン製のシフトノブにそそられる。ストロークが短く、気持ちよくコクコクと次のギアを選べる。

通常のNSXとタイプRとの0-97km/h加速時間の差は、1秒もない。ファイナルレシオが4.23:1へ低められ、鋭い加速を助けている。しかし実際に運転すれば、加速力がスーパーカーの動的能力のすべてを表すものではないと、すぐに理解できる。

車高が10mm落とされ、スプリングとダンパー、アンチロールバーを強化。サスペンションの設計自体にも手が加えられており、決定的な違いを生んでいる。通常のNSXも優秀なアスリートかもしれないが、NSX タイプRは間違いなくゴールドメダリストだ。

運転中、ドライバーへ伝わってくるすべてが別格だった。エンジンのサウンド、乗り心地、ステアリングホイールへのフィードバック。NSX タイプRを運転すると、ドライバーの感覚も研ぎ澄まされる。中毒性も相当に高い。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・マクレマン

    Greg Macleman

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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