マツダのコ・パイロット(副操縦士)、EDSSを変えるのか? 公道試験に同行してみた
公開 : 2021.12.08 06:15
マツダによる、ドライバーの異常を検知し、車両を停止させる新技術。開発中の「コ・パイロット・コンセプト」の公道試験に同行してみました。
国交省 2023年からEDSS搭載を視野に
マツダが11月4日、「Mazda Co-Pilot CONCEPT(コ・パイロット・コンセプト)」を発表した。
これはドライバーの異常を自動検知して車両を安全に停止させる次世代安全技術。この技術を体験するため、11月下旬、公道で同乗する機会を得た。ここではその体験をレポートしたい。
交通事故総合分析センターの統計によると、2008年から2012年の5年間に運転中の急病・発作による事故は、年平均250件ほど起きているという。高齢化が進む中でこのような事例は増える可能性は十分考えられる。
また、病気とまではいかなくても、運転中に眠気を感じることはドライバーなら誰しも経験しているはずだ。
こうした事態に対処するために国土交通省は「ドライバー異常時発見システム(EDSS)」の搭載を進めており、2023年9月以降の新型車から順次適用する方向性を打ち出している。
その動きに自動車メーカーも順次対応し始めており、今後は搭載車が増えていく見通しだ。
そうした中でマツダから発表されたのが、ドライバーの異常を自動検知して車両を安全に停止させる次世代安全技術「コ・パイロット・コンセプト」である。
ドライバーを選ばず、どこでも動作 コ・パイロットの特徴
「コ・パイロット」とは一般的に飛行機の副操縦士のことを指す。
この“副操縦士”が常にドライバーの脇にいて、必要なときは直ちに運転に介入して操縦を支援するのが「コ・パイロット・コンセプト」。
つまり、この“副操縦士”が体調の急変や居眠りを検知し、必要に応じて警告。運転を継続できないと判断した時には車両を停止させて安全を確保する。
この寄り添いがあるからこそ、ドライバーは心から安心して運転が楽しめる。そんな環境の実現をマツダは目指しているのだ。
中でも「コ・パイロット・コンセプト」で見逃せないのは、基本的な運転能力を維持できていればドライバーを選ばず、モード切り替えなどは不要で常に動作することだ。
さらに作動範囲は高速道から一般道まですべての道路を対象としている。つまり、「コ・パイロット・コンセプト」は、ドライバーの居眠りや身体の異常に起因する事故に対して、広範囲で抑制しようとする考えの下で開発されているのだ。
コ・パイロット「2.0」の計画も
マツダはこの「コ・パイロット・コンセプト」をベースとした「コ・パイロット1.0」を、2022年に発売する新型車に搭載していき、25年以降にはドライバーの身体の変調を予兆検知して車線変更まで行う「2.0」へと進化させていく計画だ。
まず“1.0”は車内カメラがドライバーの居眠りや急な体調変化を検知すると、追突などの二次被害を防止するため、ハザードやブレーキランプ、ホーンを発動して車外に異常を報知。
そして車両が安全な避難場所に近づくと周囲の車両の流れを乱さないように配慮しつつ徐々に減速して安全に停車し、その後、ヘルプネットに接続して緊急事態を伝えるというもの。
次に“2.0”では、脳科学の知見を活かしてドライバーの異常に至る予兆を早期発見する技術を導入し、異常を察知した場合は車線変更をして路肩や非常停止帯への退避技術を加える予定になっている。
今回の体験試乗では、このうち退避技術を体験することになった。
ただ、試乗コースが公道であった関係上、ドライバーが瞼を閉じたり、運転姿勢を保てない状況下の体験ではなく、緊急作動ボタンを押すことで車両を路肩に完全停止させる技術を対象とした。
実は、この緊急作動ボタンを押して車両を停車させる機能も見逃せない機能の1つ。
すでにバスなどで採用され始めているのだが、乗用車ではまだ搭載された例がないのだ。
この機能を搭載していれば、ドライバーがまだ意識があるうちに自らボタンを押したり、あるいは助手席にいる人がボタンを押すことで自動的に停止まで行ってくれるわけで、いざという時にその有効性は極めて高い。
それをマツダはいち早く2022年の新型車に「コ・パイロット」で搭載予定としているのだ。
試乗した車両はマツダ3のファストバック/スカイアクティブDをベースとした技術試作車。ベース車に搭載されているセンサーに加え、カメラ12個、高精度マップ、ロケーターECUが追加されていた。