2021年の最高を選出 シンプルなケータハム 見事な統合のフェラーリ BBDC 2021(2)

公開 : 2021.12.30 05:45

2021年のベスト・ドライバーズカーを選出する、AUTOCAR恒例のBBDC選手権。11台の優秀モデルから頂点に選ばれるのは?

1年で最も長く喜びを得るならi20 N

BBDC選手権の審査員の1人、プライヤーがあごひげを触りながらヒュンダイi20 Nを降りる。「1年に走るすべての道で、最も長く喜びを得られる1台をノミネート車両から選ぶなら、i20 Nでしょう。とても楽しい」

「神経質に運転する必要も、擦り傷を過剰に心配する必要もありません。気兼ねなく乗れるというのは、重要なことです」。彼の意見に賛同する。2021年のノミネートで、最もお手頃な価格のモデルだからだ。

ヒュンダイi20 NとフェラーリSF90 ストラダーレ・アセット・フィオラーノ
ヒュンダイi20 NとフェラーリSF90 ストラダーレ・アセット・フィオラーノ

適度にコンパクトで、目立つカラーで、ワインディングを3速で爽快に駆けられる。攻め立てて走って欲しいと、クルマがドライバーに訴えてくる。ドライバーはそれに応える。グリップの限界付近で、深い充足感を得られる。

ホットハッチとして、グリップもスピードも、アグレッシブさも、期待以上のモノを備えている。サーキットへ持ち込まずとも、その能力を英国の一般道で充分に味わい尽くせる。日常的な使い勝手の良さも、乗ればすぐにわかる。

アングルシー・サーキットでは果敢に回頭し、コーナーへ食らいついた。シンプルさとダイレクトさで、多くに伍する体験を与えてくれた。

ライトブルーのヒュンダイi20 Nの対局にあるモデルは何か。ノミネート車両を遠くから眺め直す必要はない。ワイド&ローでレッドな1台がある。電動化技術を採用し、時々静かで、とても騒がしいクルマだ。

そう、フェラーリSF90 ストラダーレ。審査員のフランケルはこのクルマを次のように表現する。「活発なサラブレッドを、狭い部屋で放っているようなもの」

度肝を抜くほど速いSF90 ストラダーレ

イタリア生まれのプラグイン・ハイブリッド(PHEV)を、公道では思う存分捲し上げることができなかったようだ。「とてつもない。展開しきれません。公道は完全に間違った環境といえます。すべてを完璧にこなせますが、誰のためのクルマなのでしょう」

「生産台数は無制限で、英国価格は約50万ポンド(約7700万円)。まともな荷室はない。フェラーリ488 GTBを運転して、あまり楽しくないと感じる場面は一度もなかったのですが」

フェラーリSF90 ストラダーレ・アセット・フィオラーノとアリエル・アトム4
フェラーリSF90 ストラダーレ・アセット・フィオラーノとアリエル・アトム4

確かにSF90 ストラダーレは、英国東部のスノードニア周辺のカーブを、ノミネート車両のどれより余裕を持って処理した。だが、クルマとして現実離れした能力が審査員を悩ませた。

パフォーマンス・モードを選ぶと、PHEVのパワートレインは度肝を抜くほど速い。僅かなアクセルペダルの操作に対して、極めて敏感に反応する。ヒュンダイi20Nとは異なり、ペダルを深く踏み込むと、社会的に認められないと感じてしまうほど。

審査員のディスデイルは、このPHEVが素晴らしく統合されていると表現した。確かに、そう感じる。超シャープなエンジン1基が、超シャープに反応しているようだ。瞬間的に発生する巨大なトルクで、ドライバーを陶酔させる。

フェラーリの特色の通り、ステアリングホイールを握る指先の細やかな操作に、ボディは機敏に反応する。正確で独特の緊張感がある。複雑なPHEVは見事なまでに統制され、軽くない車重も感じさせない。だが、それが印象のすべてではなかった。

記事に関わった人々

  • マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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