2021年の最高を選出 シンプルなケータハム 見事な統合のフェラーリ BBDC 2021(3)
公開 : 2021.12.31 05:45
2021年のベスト・ドライバーズカーを選出する、AUTOCAR恒例のBBDC選手権。11台の優秀モデルから頂点に選ばれるのは?
ジュリア GTAmの公道を飲み込むような走り
プジョー508 PSEはバランスに優れた操縦性を持ち、ドライバーとの一体感が高いことを伺わせる。だが、「完全にはオフにできない、電子制御システムの管理下にある印象を拭えません。シャシーの方向性は良いのですが」。とフランケルが漏らす。
筆者、ソーンダースは、物足りないトルクやレスポンスが気になった。操縦性は、もっと直感的で自由度が高くて良いと思ったし、MTが選べないのも残念というのが本音だ。
508 PSEのドライビング体験には、ナチュラルで従来的な訴求力が足りなかった。パワーを弾けさせる、活気に溢れたアルファ・ロメオ・ジュリア GTAmが、その感覚を一層強めていたように思う。
ジュリア GTAmのステアリングは、穏やかなドライブモードを選んでいる時は、驚くほど軽い。レース・モードを選ぶと、少し重みが増す。だが常時ダイレクトで、正確で繊細で滑らか。往年のDTMレーシングカーのような見た目とは、裏腹なほど。
公道では、審査員4名の全員がジュリア GTAmの圧倒するような走りに夢中になった。サーキットでは、ターボ加給される2.9L V6エンジンが強大なパワーをすべて解放。ブレーキがそれをしっかり受け止めてくれた。
サスペンションも、ミシュラン・パイロットスポーツ・カップ・タイヤも、すべてが一丸。なんとエネルギッシュなクルマことか。
その反面、弱点は耐久性のようだ。クラッチベースのリアデフは、サーキットを攻め込むと数周でオーバーヒート。当初は自在にアングルを決められていたドリフトも、制御が難しくなってしまった。白煙を立てながらの脱出加速も。
心を揺さぶるウラカン STOの音響
その最大のライバル、BMW M3 コンペティションは、繊細さや感覚の濃さ、エネルギッシュな個性という点でジュリア GTAmには及ばない。だが、サーキットでの落ち着きや耐久性という点では勝る。
ディスデイルは、「ドライバーの邪心を甘やかすように、必要ならテールスライドもきれいに決められます」。と笑顔で話す。
アナログでオールドスクールな個性と、デジタルでモダンな能力が融合した、興味深い4ドア・スーパーサルーンだといえる。M3は素晴らしく表現力豊かで、自在に楽しむことを許してくれた。
アナログで表現力豊かなモデルとしては、さらに極上のノミネートがある。ポルシェ911 GT3と、アストン マーティン・ヴァンテージ F1エディション、ランボルギーニ・ウラカン STOという3台だ。
アングルシー・サーキットとその周辺のワインディングでの3日間、内燃エンジンが生むドラマを満喫させてくれた。壮大なサウンドとともに。
特にランボルギーニ・ウラカン STOは、その存在自体に賛辞を贈りたい。放たれる音響は類まれなほどに壮大。自然吸気V型10気筒エンジンの奏でるハーモニーが、心を強く揺さぶる。
日曜日の朝6時に隣家から聞こえてきたら迷惑なだけだが、人影のないスノードニア周辺の昼間なら、最高のサウンドトラックになる。400mほど離れた道を走っていても。
サーキットへ持ち込めば、その場を支配するような咆哮を響かせる。このエグゾーストノートが、どうやって欧州の騒音規定をパスできているのか、疑問ではあるけれど。