2021年の頂点は フェラーリSF90 甚大なパワーを展開 決勝の3台 BBDC 2021(5)

公開 : 2022.01.02 05:45

2021年のベスト・ドライバーズカーを選出する、AUTOCAR恒例のBBDC選手権。決勝に進出した3台から頂点に選ばれる1台は?

911 GT3のしなやかなサスに感銘

アリエル・アトム 4の運転は、2019年や2020年と同様に、2021年でも特別な体験だった。審査員のソーンダースがまとめる。「ドライバーの努力や積極性が問われます。その見返りの豊かさで、超えるモデルは他にないでしょう」

2020年のディフェンディング・チャンピオンとして馴染みのあるアリエル・アトム 4に対し、フェラーリSF90 ストラダーレは最新技術を搭載した未知の領域。一方のポルシェ911 GT3は、久しぶりに、素晴らしい記憶を思い返させてくれるものだった。

フェラーリSF90 ストラダーレ・アセット・フィオラーノとポルシェ911 GT3
フェラーリSF90 ストラダーレ・アセット・フィオラーノとポルシェ911 GT3

見た目だけでなく、エンジンノイズやポルシェがPDKと呼ぶデュアルクラッチATの弾かれるような感触も、歴代に通じている。だが、味わいは異なる。

空力特性を向上させるボディキットと、フロントにダブルウイッシュボーン式のサスペンションを備え、スプリングレートは991型の2倍。エンターテインメント性というより、シリアスな喜びにベクトルが向かっている。

発表時の硬い乗り心地はマイルドに調整され、スノードニア国立公園周辺のトリッキーな路面へしなやかに追従。その処理力は、感銘を与えるものだった。

「一般道ではサスペンションの硬さを不安視していましたが、杞憂でした。フラットに落ち着いています。とても正確で、惹き込まれるような印象です」。とソーンダースが口にしたが、全員が同じ意見だったと思う。

スワンネックのウイングなど、空力特性や操縦性の向上が図られたGT3は、サーキットでもポルシェらしさを強く感じさせた。「まさに完璧」。とソーンダースが感心する。

獲得した幅の広さこそ最大の訴求力

「コーナーでは、どんなスピードやドリフトアングルでも、望んだラインを狙えるように感じます。ブレーキやバランスも抜群。姿勢制御の限界を超えるほどの速度へ、達することすら難しい」

GT3は、傍若無人に白煙を挙げたいようなドライバーも、相変わらず受け入れてくれる。それでいて、美しい走りを求めるドライバーへも、次の水準の世界を見せてくれる。

フェラーリSF90 ストラダーレ・アセット・フィオラーノ(英国仕様)
フェラーリSF90 ストラダーレ・アセット・フィオラーノ(英国仕様)

プライヤーが続ける。「好きなだけドリフトを楽しめるだけでなく、緻密に繊細に操る楽しさも素晴らしい」

ディスデイルも同調。「クリーンに周回するか、テールをスライドさせるかは関係ありません。911 GT3は、そのどちらでも非の打ち所がない」。新しく獲得したこの幅の広さこそ、992型911最大の訴求力だろう。

では、1000馬力のフェラーリはどうだろう。PHEVのハイパーカーがBBDC選手権で切り拓く、新領域に期待が高まる。

スノードニア国立公園に広がるワインディングでは、明らかに能力を発揮することが難しかった。ワイドなボディも相まって。しかし、サーキットなら従来を超える体験をもたらしてくれるだろう、という期待も抱かせた。

実際、その通りだった。パワートレインや質量を考えれば、筆者が出会ったクルマで最も感銘を受けた1台といえる。

ソーンダースも、アングルシー・サーキットでの最速ラップタイムを残した後に、こう振り返っている。「3年前に488 ピスタでこのコースを走った時、こんなに速いクルマはないと思いましたが、これも同じ。スゴイ」

記事に関わった人々

  • アンドリュー・フランケル

    Andrew Frankel

    英国編集部シニア・エディター
  • マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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