セレブは、SUVがお好み? セダンより選ばれる、フォーマルシーンのクルマ事情
公開 : 2021.12.13 21:15
海外のセレブリティがSUVで姿を現す。そんなシーンがすっかりお馴染みになりました。米国のセレブ御用達ブランドでは、ラインナップ自体も変わりつつあるようです。
なぜ選ばれる? 背が高いクルマたち
それまではセダンやクーペに乗っていたセレブたちが、SUVで移動することが多くなった。
セレブなのでクルマを何台も持っており、その中にSUVが加わったという表現のほうが正しいと思うが、オフィシャルな場にはSUVで向かうシーンを動画などでよく見かける。
こうした需要に合わせてプレミアムブランドやラグジュアリーブランドが、次々にSUVを送り出すようになっている。
なぜこのような流れになっているのか。
理由の1つとして言えるのは、昔から背の高さは高級車の証であり、今でも背の高いクルマに乗ることに優越感を抱く人がそれなりにいるからだろう。
高級車を代表するブランドと言えば、クルマにくわしくない人でもロールス・ロイスの名前を思い浮かべるはずだ。
そのロールスの中で、昔も今もフラッグシップとして君臨するファントムの全高は1645mmある。これより背の低いSUVをいくつも挙げられるほどだ。
ロールスがBMWグループに入る前に作られていたリムジンのファントムはさらに背が高く、最終型のファントムVIで1750mmと、日本人の平均身長も上回っていた。
クルマに限った話ではない。ホテルの部屋は天井が高いほうが贅沢に感じるし、教会は尖塔が高いと立派に見える。
イタリアのトスカーナ地方にある小都市サン・ジミニャーノは、中世の時代、貴族や地元の富豪たちが競って建てた石造りの高い塔が今も残っていることから、ユネスコの世界遺産に登録されている。黄金期には72本もあったと言われる塔は、権力や富の象徴だったという。
では、低いクルマは何の象徴?
ただしリムジンの中で背が高かったのは、ロールスやディムラーなどの英国産、それに影響を受けた日本の日産プリンス・ロイヤルやトヨタ・センチュリー・ロイヤルあたりに限られると記憶している。
アメリカのキャデラックやドイツのメルセデス・ベンツのリムジンは、セダンのストレッチ版という成り立ちであり、背は低かった。
アメリカ車は第2次世界大戦以降、国力の豊かさを象徴するように、より長く、より幅広く、より低いボディがカッコいいという価値観で発展してきた。
ドイツには速度無制限区間もある高速道路アウトバーンが存在しており、高速走行時の安定性が重視される。理由は違うが、どちらも背の高さは不利になる。
2つの国のリムジンが示しているように、クルマの世界には背が低いほど素晴らしいという価値観もある。特に空力性能や走行性能が重視されるスポーツカーやレーシングカーは、この面が優先される。
1960年代にル・マン24時間レース制覇のために開発され、目的を達成したフォードのスポーツカーがGT40と、インチでの車高を表す数字とともに呼ばれていたことは有名だ。低さは速さの象徴だったのである。
高さにこだわるか、低さにこだわるか。どちらの価値観を選ぶかは、立場によって異なるはずだ。
威厳が重視される国家元首などは背の高いほうを選択するのに対し、芸能人やスポーツ選手は活動的であることも大切だから、プライベートでスポーツカーを乗り回したりしてきたのだろう。
となると、背が高いけれどカッコいいクルマこそ理想ということになる。そんな中でアメリカ人たちが注目したのがSUVだ。