【現実の環境でテスト】ポルシェ・タイカン・ターボS 一般道/高速道路/峠道で検証

公開 : 2021.12.19 12:10

現実に則した環境でポルシェ・タイカン・ターボSに試乗。クルマの出来は勿論、インフラ整備の姿勢に感心しました。

充電器があれば、何処でも

話は3か月ほど遡るが、9月23日の昼、私が経営する甲府の旅館(常磐ホテル)の駐車場で、マツダロードスターを洗車していると、見慣れないスポーツカーがエントランスに入ってきた。

ピュアなホワイトのボディのクルマは何とポルシェタイカンであった。

経営する甲府の旅館(常磐ホテル)の駐車場に入庫していたポルシェ・タイカン。
経営する甲府の旅館(常磐ホテル)の駐車場に入庫していたポルシェ・タイカン。    戎大介

これまで、都内ではタイカンに何回か出会っていたが、地方で見るのは初めてで、同じ時間に来ていたランボルギーニアヴェンタドールに比べても新鮮に見えた。

そのクルマは浜松ナンバーであったから、おそらく、最近全通したばかりの中部横断自動車道を利用して、甲府にツーリングに来たのだろうと確信した。

充電器の脇に停め充電を開始したオーナーにお声をかけ、話を聞くと、家にポルシェの8kWの充電器を準備中で、足のクルマはBMW i3だそうだ。

EVに全てのクルマを変えてしまった訳で、やはり、このくらい徹底しないとEVに切り替えることはできないだろうと感じた。

タイカン・オーナーの当館への滞在時間は、昼食時の1時間半程度であったが、たとえ、当館の一般的な3kW容量のもので、充電量も気休め程度であっても、充電器があれば何処でもすぐに充電を行う、というのは、EV生活の基本であろう。

ポルシェの充電器の設置について

この来客の話を、ある会合で、ポルシェ・ジャパンのキルシュ社長にしたところ非常に喜び、ぜひ、常磐ホテルにも、ポルシェの8kWの充電器を装備しませんか、と提案された。

今年中に装備できれば、キャンペーン中で、費用はポルシェ・ジャパンが全て持ってくれる、とのことで、こちらとしては、願ったり叶ったりであった。

戎大介

その理由は以下のようである。

このところのEVの試乗で痛感した第一のことは、国内で一般に設置されている3kWの普通充電装置ではパワーが少なすぎ、高性能のEVの充電には、時間が掛かりすぎることだ。

そこで、現在ある3kW 2基に加え、6kWを1基追加しようと計画し、国への補助金の申請も行ったのである。

無論、そのためには、ホテル内の総電力の供給量や消費量を計算し、増設が可能かどうか、調査をしなければならなかった。

特に注意する点は、6kW/200Vの場合、流れる電流は最大30Aとなるので、それに耐えうる電力がきているか、また、それに耐えうる配線をしなければならないということであった。

当社の場合は、500kWもの大容量なのでキャパシティに問題はなかったが、配電盤から新たに敷く配線は、それなりの太さが必要であった。

ところが、補助金申請は何と採択されず、その理由も明らかにされなかった。推測するに、6kWはまだ日本では必要ではない、という判断なのだろう。

事実、パナソニックに問い合わせると、6kWは殆ど出荷していないという情けない状況であった。

これでは、EVなど普及するわけがない、と思っているところへ、ポルシェ・ジャパンの8kW(この場合は40Aの電流が流れる)の設置の提案があった訳で、すでに館内は調査済みなためスムースに事は運んだのである。

設置の予定は、12月29日である。無論、一般のEVでも何の問題もなく使用できる。

実際、輸入車メーカーの中でも、充電装置まで、独自のものを制作して全国展開しようとするポルシェの姿勢には頭が下がる。

自社の高性能スポーツカーとしての性能を維持するためには、インフラから整備しないとダメだ、という考えに至ったのは良くわかるし、そのための努力も素晴らしいと思う。

日本の現状では、一般家庭で8kWの充電器を備えるだけで、かなりハードルが高い。まずは、契約電力の引き上げから始めなくてはならないケースが殆どだろう。

私の場合は、幸い、2拠点のうち、甲府は大規模施設なので契約電力の問題はクリアし、また、川崎の自宅のガレージも工具を使用するため、元々、200V、60Aの契約だったので問題はないはずだが、6年ほど前、BMW i3の試乗の時に設置したEV用のコンセントに至る配線の太さが、40Aでは耐えられないことが分かり、今、太い配線に交換をする予定だ。

下手をすると出火の原因になるため、慎重な対応が必要である。

記事に関わった人々

  • 執筆

    笹本健次

    Kenji Sasamoto

    1949年生まれ。趣味の出版社ネコ・パブリッシングのファウンダー。2011年9月よりAUTOCAR JAPANの編集長を務める。出版業界での長期にわたる豊富な経験を持ち、得意とする分野も自動車のみならず鉄道、モーターサイクルなど多岐にわたる。フェラーリ、ポルシェのファナティックとしても有名。

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