いま、EVについて言えること 値段・環境負荷・充電不安…… 購入時の疑問に回答

公開 : 2021.12.22 06:05

EVは本当に環境に優しいのか、また公共の充電設備は十分なのか。購入を検討する人たちの疑問に答えます。

EVへの疑問に一挙回答

EVに対する疑問を持つ人は多いだろう。今回は、EVは本当に環境に優しいのか、航続距離を気にする必要があるかどうかなど、さまざまな疑問に向き合いたい。

いまだにはっきりと判断できない点もあるが、英AUTOCAR編集部のスティーブ・クロプリーが現時点で答えられる範囲で答えていく。

環境保護の観点から普及が進められるEV。本当に環境に良いのか、利便性はどうなのか、疑問は多い。
環境保護の観点から普及が進められるEV。本当に環境に良いのか、利便性はどうなのか、疑問は多い。

EVはエンジン車よりも総費用が高いというのは本当?

答えは「イエス」。そのほとんどが購入時の車両価格によるものだ。例えば、入門モデルのフォルクスワーゲンID.3は約3万900ポンド(約465万円)で、英国では政府補助金を加味すると2万8490ポンド(約430万円)となる。一方、同クラスのゴルフの1.0Lガソリン車はそれより約3000ポンド(約45万円)も安い。

しかし、EVのリセール価格は高く、今後もその傾向が続くと思われる。エンジン車とEVの価格差は狭まってきていることを忘れてはならない。

フォルクスワーゲン最小のEV、ID.3(日本未導入)
フォルクスワーゲン最小のEV、ID.3(日本未導入)

一方、EVの燃料費はかなり安い。EDFエナジー社によると、1kWhあたりの電気代を平均14ペンス(約21円)とした場合、日産リーフキアeニロが160kmあたり約4ポンド(約600円)であるのに対し、燃費が17km/hのガソリン車では160kmあたり14ポンド(約2100円)以上となる。

1年で1万9000kmを走るとすると、ID.3が500ポンド(約7万5000円)、ガソリン車のゴルフは1750ポンド(約26万円)と差が開く。

その上、欧州各国ではEVに対する社用車税や道路税、渋滞税などを減額ないし無償化しているため大幅な節約に繋がっている。

バッテリーはどのくらいの年月で劣化するのか?

この点についてはまだ結論が出ていないが、一般的には、駆動用バッテリーの劣化はオーナーやメーカーが当初懸念していたよりも遅いと言われている。初期型で走行距離の多い日産リーフやルノー・ゾエでは劣化が見られるが、後期型はよく耐えている。多くの一般ユーザーは、このことに驚いている。

とはいえ、バッテリーは現在のEVの中で最も高価な部品であり、もし8年や10年で交換が必要になった場合、数十万円から100万円以上をかける価値があるかどうかは疑問である。毎回フル充電しないなど、バッテリーを長持ちさせる方法をとるのが有効だ。

ノートパソコンと同様に、駆動用バッテリーは充放電を繰り返すことで劣化していく。
ノートパソコンと同様に、駆動用バッテリーは充放電を繰り返すことで劣化していく。

一貫して技術をリードしてきたテスラは、長寿命の「100万マイルバッテリー」と称するものを、まもなく中国製のモデル3などに導入しようとしている。このバッテリーは、最も高価な化学成分であるコバルトの含有量も低くなっている。つまり、テクノロジーは正しい方向へ進んでいるのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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