新型ロールス・ロイス・スペクター プロトタイプ発見 「レイス」後継となり得るか

公開 : 2021.12.28 18:05

ロールス・ロイス初のEV、スペクターが2023年の発売に向けテストを開始。その姿が初めて目撃されました。

派手なカラーリングでテスト走行

ロールス・ロイスは、2023年第4四半期の市場投入に向け、同社初のEV「スペクター」の実走行テストを開始。そのプロトタイプが初めて目撃された。

プロトタイプはさまざまな条件でテストを行い、400年分の使用に相当するという約2億4000万kmを走行する予定だという。今回カメラが捉えた車両では、新型EVのデザインをより鮮明に確認することができる。

ロールス・ロイス・スペクターのプロトタイプ
ロールス・ロイス・スペクターのプロトタイプ    AUTOCAR

スペクターは、特徴的な長いボンネットと筋肉質なプロポーションを持つ2ドアのグランドツアラーとなり、2013年に発売されたレイスの後継モデルとして有力視されている。レイスの全面的な生産終了はまだ発表されていないが、米国市場では今年、ソフトトップのドーンと並んで撤退していることから、その時期が近づいていると考えられる。

2008年に登場したF01世代の5シリーズをベースに、親会社であるBMWが全面的に開発したプラットフォームを採用しているのは、今やレイスとドーンだけだ。大型のファントム、ゴースト、カリナンには、ロールス独自のプラットフォームが採用されている。このプラットフォームにはEVのドライブトレインを搭載することができる。

ロールス・ロイスが電動化を初めて予告したのは、2011年に発表されたファントムをベースとしたコンセプト「102EX」だ。このコンセプトは、主に大排気量のガソリンエンジンに代わるものとして、電動パワートレインの可能性を判断するために考案された。

102EXとスペクターの外観の違いには、ロールス・ロイスの電動化時代におけるデザインの進化が現れている。ミュラー・オトヴェスCEOはAUTOCARに対し、エンジン非搭載車であっても、ブランドのトレードマークである「パルテノングリル」を何らかの形で存続させることを示唆した。

スペクターは、レイスの特徴である逆開きのドアも継承し、いまのところ大幅に車高が高くなるという予測もない。そのため、高級クーペとしての性能は維持されるだろう。

2016年に発表されたコンセプト「103EX」は、ブランドのEVデザインの方向性を示す手がかりとなった。スペクターは、量産に適した伝統的なシルエットを採用しているが、その関連性は明らかだ。

EVなのにロングボンネット

現行プラットフォーム「アーキテクチャー・オブ・ラグジュアリー」は柔軟性が高く、スペクターでもエンジン車仕様を設定することができるだろう。プロトタイプの長いボンネットは、同プラットフォームをベースにした全モデルに搭載されているツインターボ6.75L V12エンジンのスペースがあることを示唆している。

しかし、ロールス・ロイスは、ハイブリッド車をEVへの「つなぎ」として使うという業界の流れに逆らって、純EVドライブトレインへのこだわりを表明してきた。ライバルのベントレーが3台のPHEVをラインナップしているのとは異なり、ロールス・ロイスは従来型のパワートレインを電動化することはない。

ロールス・ロイス・スペクターのプロトタイプ
ロールス・ロイス・スペクターのプロトタイプ    AUTOCAR

ミュラー・オトヴェスCEOは、ガソリン車からEVへの「スムーズな移行」を約束し、V12エンジンは「長い間」使われることになると述べている。とはいえ、V12は2030年のラインナップ完全電動化までには退役する見込み。1904年にヘンリー・ロイスが設計し、チャールズ・ロールスが販売した2気筒の10HPから始まった126年間の内燃機関による自動車生産に終止符を打つことになる。

スペクターは、ブランド本拠地の英グッドウッドにおいて、これまでのモデルと同じ生産ラインで手作業で組み立てられる。BMWグループの既存モデルをベースにしたものではないと、同社は胸を張る。

そこで疑問なのが、ドライブトレインだ。ロールス・ロイス独自のEVモーター技術の導入は明らかにされておらず、親会社が提供するモーターの使用も確認されていない。

BMWの最上級EVである新型iX M60に搭載予定のツインモーターは、最高出力608psを発揮し、2.5トンのSUVを静止状態から約4.0秒で100km/hまで加速させる性能を有する。このような力強さは、ロールス・ロイスの滑らかで高性能なV12の特性を模倣するのに適しているだろう。

一方、BMWが開発中の長距離走行用固体電池を採用する可能性は低い。ロールス・ロイスは、顧客の多くが都市部に住んでおり、頻繁に長距離移動をしないことをブランドとしても認識しているため、航続距離を追求することはないと思われる。

BMWグループは水素燃料電池の開発にも取り組んでおり、最近発表されたX5ハイドロゲンはその姿勢を表すものとなっている。ミュラー・オトヴェスCEOは、「現在、わたし達はバッテリーが適していると考えています」とAUTOCARに語ったが、代替のソリューションを用意しておくことは「賢明」であると付け加えている。

業界では一般的に、水素は大型で重量のある車両に適した動力源であると考えられている。ロールス・ロイスは市販車の中で最も重いクルマの1つであるため、将来的にはFCEV技術の恩恵を受ける可能性がある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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