メルセデスAMG EQS 53 4マティック+へ試乗 761psの四駆 AMGのプライド 後編
公開 : 2022.01.06 08:26
AMGがチューニングを施した純EVサルーン、EQS 53。上質さと動的能力に英国編集部は感銘を受けたようです。
強力で洗練されたドライブトレイン
メルセデスAMG EQS 53のアクセルペダルを踏み込むと、怒涛の勢いで加速していく。160km/hを超えても怯むことなく、直進安定性も極めて高い。中間加速も同様。フロントモーターが効果的に、リアモーターをアシストしてくれる。
ステアリングホイールにはパドルが付き、アクセルペダルを緩めた時の回生ブレーキの強さを3段階から選べる。最も強力な状態では最大で300kWの発電能力があるといい、勢いよくスピードも落ちる。
ドライブトレインの洗練度も優秀。フロントの駆動用モーターから高音域のノイズが聞こえる場面もあったが、それ以外は至って静か。印象的なほどにスムーズだ。
AMGにしては静か過ぎるとお感じのドライバーのために、様々な合成サウンドも用意されている。アクセルペダルの踏み込み量や、駆動用モーターの負荷に応じてボリュームや音色が変化する。
ただし、フルスロットルから右足の力を緩めても、サウンドは絞られるだけ。内燃エンジンのAMGでは、雷鳴のような唸りや破裂音が楽しめたのだけれど。
AMGは、サスペンションにも独自のチューニングを加えている。AMG 4ドアクーペでも採用されているアダプティブダンパーをEQS 53用に改良し、通常のEQSから車高も落とされている。ブッシュ類も専用品だ。
初試乗したのは北米のカリフォルニア。コースは、ツギハギの多い高速道路と、走りがいのある渓谷部のワインディングが指定された。
感心するほどに意欲的なコーナリング
ステアリングホイールを軽く回してみると、反応がより鋭いことがわかる。フロントタイヤの接地面が広げられていることもあってか、コミュニケーションも取りやすい。
スポーツ・モードでのEQS 53は、目を見張るほどに意欲的。大柄なボディの割にライン取りがしやすく、素早く進路変更を求めると、さも当然のように向きを変える。
ステアリングホイールは、もう少し手応えがあっても良いと感じた。コーナーで身体が圧迫されるほどの旋回Gを考えれば。
四輪操舵システムを備え、俊敏性も素晴らしい。AMGの技術力が発揮され、全長5.2mを超えるクルマが流暢に身をこなす。バッテリーの搭載位置による低い重心高も、操縦性を高めるうえで重要な役割を果たしているに違いない。
2.5tを超える車重だけあって、コーナリング時の慣性は小さくない。しかし、必要に応じて駆動力分配が可能な四輪操舵システムを搭載し、タイヤもアップグレードされている。路面を掴みきれなくなることは殆どなかった。
シャシーバランスにも長け、コーナーを攻め込むとリアタイヤ側が主導であることを感じ取れる。ストレート目掛けてアクセルペダルを踏み倒せば、有り余るパワーを確かなトラクションで展開してくれる。
勢い余って限界を超えると、電子制御のスタビリティ・コントロールが素早く介入。タイヤ毎にブレーキを調整し、パワーを絞り、適切なラインへ引き戻してくれる。