ポルシェ・マカン Sへ試乗 小変更で380ps スポーツカー・メーカーが作るSUV

公開 : 2022.01.16 08:25

多能なSUV、マカンがマイナーチェンジ。実力を高め、更なる人気獲得につながると、英国編集部は評価します。

これまでに60万台以上が売れたマカン

発売から7年が経過したマカンは、ポルシェ史上最も多売なモデルとなった。世界に名の通ったスポーツカー・メーカーでも、稼ぎ頭の1つはスポーツカーではなくなっている。

ポルシェは、スポーティとはいいにくいモデルに、スポーティなイメージを与えることが得意だ。SUVのカイエンもそうだし、純EVのタイカンをラグジュアリー・リムジンのスポーツカーと呼ぶ人もいる。

ポルシェ・マカン S(英国仕様)
ポルシェ・マカン S(英国仕様)

このマカンも、SUVでありながらスポーティな雰囲気を漂わせている。その効果もあって、これまでに60万台以上のマカンを販売しており、当初の予想を上回る結果につながっている。

世界的に見ると、マカンを購入した人で80%近い割合が、ポルシェの新規顧客だったという。加えて、そのうちの60%は女性だそうだ。ポルシェのデザインや、製品としてのイメージや品質は、男性に限らず魅力的に映るのだろう。

この成功を踏まえれば、ポルシェがマカンに与えたマイナーチェンジが、大掛かりな内容ではなかったこともうなずける。施された範囲は限定的で、表面的な部分が中心となっている。

マイナーチェンジ前後を見比べてみると、フロントやテールの見た目が効果的に変化している。特に、リアバンパー下部のディフューザーなどが、わかりやすいだろう。

インテリアの違いはより明確で、センターコンソールの造形やスイッチ類の処理が新しくなった。シフトレバーは短くなり、ダッシュボード上部にアナログ時計が据えられた。

一昔前のスーパーカーに迫る動力性能

AUTOCARの読者ならご存知かもしれないが、今回のマイナーチェンジでマカンは3グレード構成に見直された。4気筒ターボエンジンを搭載するマカンがエントリーグレードで、2.9L V6ツインターボエンジンを搭載するSとGTSが馬力違いで上位に並ぶ。

グレードを問わず、マカンは四輪駆動とシフトパドル付きの7速PDKが標準。今回試乗したのはマカン Sで、英国価格は5万3500ポンド(約829万円)からに設定される。GTSより5540ポンド(約85万円)安く、賢明な選択肢に思える。

ポルシェ・マカン S(英国仕様)
ポルシェ・マカン S(英国仕様)

ポルシェだから、オプションもふんだんに用意されている。どれを選ぼうか、迷うのも楽しみの1つだ。

サスペンションは、ダンパーの減衰力を中心に改良を受けている。ステアリングの応答性を高め、敏捷性を磨くため。だが、スポーティな操縦性を快適な乗り心地で味わえるように、サスペンションのワイドな処理能力は保たれている。

マカン Sの最高速度は259km/h、0-100km/h加速は4.6秒と、一昔前のスーパーカーに迫る動力性能を備えている。GTSは、0-100km/h加速を0.3秒縮める。

ドアを開いて乗り込んでみると、クルマで感じられる幸せ要素が巧みに実現されている。典型例のように。製造品質は一級だし、ドイツ製品らしく堅牢さも備え、すべてが美しいと感じられる。

しばらく観察して唯一気になったのが、センターコンソールのスイッチ類。スタイリッシュでモダンだが、実際に押せるハードボタンの方が、より印象は良いように思う。ステアリングホイールは、ポルシェ911と共有している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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