DS301にSX1000、ミニ・ジェム、ユニパワーGT ミニ・ベースのクーペたち 前編
公開 : 2022.01.30 07:05
クラシック・ミニから派生した可愛いスポーツクーペ。英国編集部がポップでレアな4台をご紹介します。
イシゴニスの設計が秘めた可能性
クラシック・ミニが発表されたのは1959年。コンパクトカーのパッケージングや実用性に、革命的な変化をもたらした。アレック・イシゴニス氏の設計は、機能的でチャーミング。日を待たずして、日常的な乗用車から英国車のアイコンへと評価を高めた。
パワートレインのレイアウトは、考え抜かれた横置きエンジンの前輪駆動。コンパクトに集約され、広々とした車内空間を実現していた。加えて集約された構造は、少量生産のメーカーへ大きな可能性を与えることにもつながった。
BMCミニの動的能力が高められたのは、1961年。ミニ・クーパーが正式なラインナップとして追加され、ブリティッシュ・サルーンカー・レース(現在のツーリングカー・レース)や、世界ラリー選手権で華々しい活躍を披露した。
だが、ミニ・クーパーの開発に関与したジョン・クーパー氏だけが、小さなミニの潜在能力へ注目していたわけではない。複数の中小メーカーが、パワーアップの余地があるAシリーズ・エンジンと小さくまとまった駆動系に強く惹かれた。
理想のクルマを実現すべく選ばれた手法が、BMCミニの改造。その仕上がりは極めて多様で、マニアが手頃にスポーティな走りを楽しめるモデルから、レーシングカーの素材となったものまで幅広い。
スタイリングも個性的で、ミニの面影を殆ど残さないものも多かった。レイアウトも独創性に富んでいた。今回はそんなモディファイド・ミニのクーペ、4台をご紹介したい。
ミニのドライブトレインをミドシップ
まず1台目は、クリス・ローレンス氏が設計したディープ・サンダーソン DS301。フロントに載っていたパワートレインを降ろし、一体となった横向きのトランスアクスル構造を利用して、ドライバーの後ろ側に搭載し直されている。
後輪駆動化されたバックボーン・シャシーは、ローレンスとペアを組んでいたアンドリュー・ウォレス氏の設計。ローレンスがレースカーで特許を取得していた、トレーリングアーム構造へ改良を加えたフロント・サスペンションと組み合わされている。
しかし、最初に作られたスタイリングを、成功例だと評価する人は少なかったようだ。彼自身も、美しくないとしても機能的なボディだと、補足していたらしい。
それでも、サーキットでの走りは勇ましかった。ドイツのニュルブルクリンク・ノルドシュライフェで、立木へ衝突するほど。
クラッシュしたローレンスは、DS301のボディを低く滑らかなファストバック・スタイルへ改めることを決意。低く伸びたクチバシ状のフロントノーズと、弧を描くルーフラインを描き出した。
ボディの製造を請け負ったのは、ロンドンに拠点を置くウィリアムズ&プリチャード社。ロータスやACアシーカなどのボディも手掛けていた腕利きのコーチビルダーで、不足ないコストを投じ、アルミニウムで成形されている。