ポルシェ356 バイ・エレクトロジェニックへ試乗 フラット4へ戻せる純EV化
公開 : 2022.01.19 08:25
時流へ合わせるように、巧妙に純EV化されたクラシック・ポルシェ。恐らく英国初の事例に、英国編集部が試乗しました。
もくじ
ーエンジンで走る356にも戻せる改造
ー一見するとオリジナルと変わらない美しさ
ー4速MTでも変速する必要性はない
ーエレクトロモッドは約589万円から
ーポルシェ356 バイ・エレクトロジェニック(欧州仕様)のスペック
エンジンで走る356にも戻せる改造
今までフラット4エンジンが載っていた場所に、駆動用の電気モーターが収まった、ポルシェ356。このクルマを手掛けたのは、ロンドンから西に離れたオックスフォードシャー州を拠点とする、純EVコンバージョンを得意とするエレクトロジェニック社だ。
このポルシェ356は、とあるオーナーの希望で作られたものだという。市街地でクラシック・モデルを運転したいものの、内燃エンジンがあまり好きではないという考えへ沿うように。恐らく、英国初の純EVコンバージョン、エレクトロモッドの356だと思う。
ただし、オリジナルの1.6Lフラット4も残されている。エンジンで走るポルシェに戻したいと、いつの日か再考した時に備えて。純EV化への改造は、可逆的に行われている。英国の場合、オリジナルの登録を保持するうえでも、その必要性がある。
純EVのシステムは、ベース構造を活かして搭載されている。その大部分は、シャシーへ手を加えることなく組み込まれている。そうしなければ、1963年式ポルシェ356のアイデンティティが失われてしまうだろう。
このエレクトロモッドが、極めて巧妙に実施されていることは間違いない。36kWhの容量を持つ駆動用バッテリーとインバーター、関連する機器類は、フロントの荷室を含む妥当なところへ振り分けてレイアウトされている。
一見するとオリジナルと変わらない美しさ
かつてのエンジンルームに搭載される、駆動用モーターの最高出力は121ps。以前と同じ、4速MTを介してリアタイヤを駆動する。
トランスミッションはシングルスピードのATを選ぶことも可能だが、自ら操りたいというオーナーの意見を尊重したという。純EVと聞くと重いクルマを想像すると思うが、車重はオリジナルから約35kgしか増えていないそうだ。
外から眺めている限り、通常の356との違いはわからない。充電ポートも、従来のフィラーキャップの裏側に隠されている。ホイールやタイヤ、車高もオリジナルのまま。ボディやインテリアも、初期のポルシェの雰囲気を湛えている。
メーターパネルを覗くと、燃料計がバッテリーの充電量を示すメーターに交換されている。目に見える違いといえば、その程度だ。航続距離は225kmが主張されているが、今回は短距離を走ったに過ぎず、実際の距離はわからない。
運転席まわりの環境は、元の通りシンプル。小さなドライバーズシートと、大きなステアリングホイールが組み合わされている。どこも美しく仕立てられており、腕の立つ専門家によってレストアされたばかりのポルシェのようでもある。
MTが残されたことで、ドライビング体験は純EVとしてもかなり独特。60年前のトランスミッションを傷めないように、エレクトロジェニック社は駆動用モーターの選定には気を使ったという。