「氷河期」の終わり キミ・ライコネン、20年のF1人生を語る 独占インタビュー

公開 : 2022.02.05 06:05

その冷静さから「アイスマン」と呼ばれるキミ・ライコネン。F1を引退した今、彼は何を語ってくれるのか。

無欲な英雄 アイスマンの引退

幸先の良いスタートとは言えない。AUTOCARは、キミ・ライコネンの349回目にして最後のF1レースとなる2021年アブダビGPの週末に、Zoomを使った10分間の独占インタビューを許可された。そこで最初の質問は、当然ながら、何かしらの感情を抱いているかどうかということだ。

「いや、そうでもないよ」と彼は肩をすくめて答えた。「他のレースと同じだよ、本当に」

キミ・ライコネン
キミ・ライコネン

筆者は何を期待していたのだろうか。この返答は、42歳のフィンランド人がそのF1キャリアの大半において、賛否両論を巻き起こす人物であった理由を簡潔に、そして率直に物語っている。感情を表に出さない彼の無表情は多くの人を怒らせたが、メディアが伝える無関心さは彼をカルト的な英雄にし、「アイスマン」というぴったりなニックネームも与えられた。

彼のコース上での功績は、まさに賛否両論だ。1つのタイトル、21勝、103回の表彰台という数字が証明するように、その驚異的な速さに疑問の余地はないだろう。しかし、時にはまったく無欲で無頓着に見えることもあり、2010年にはフェラーリから2000万ポンド(約30億円)もの違約金でマシンを降ろされたと言われているほどだ。では、ライコネンのF1キャリアをどう評価すればいいのだろうか。

この20年間、F1のパドックで見てきたライコネンは、本当のライコネンではなかったというのが筆者の実感だ。フェルナンド・アロンソとセバスチャン・ベッテルがライコネンに敬意を表して話す、オフの彼がいかに変わっていたかというエピソード(酔ってイルカの風船とふざける、ジェームズ・ハントの偽名でスノーモービルのレースに参加する、など)が証明している。

良い結果を出すと、みんながハッピーになる

ライコネンは本当にそっけない男なのか、それとも自分自身を戯画化しているのだろうか?いずれにせよ、彼が現代のグランプリレースを取り巻くサーカスを楽しんでいたというより、むしろ我慢していたことは明らかだ。そして、もしF1ドライバーに求められるコース外での条件をそれほどまでに嫌っているのなら、彼は本当にF1のレースを愛しているのだろう。

「レースが好きなんだ、うん。それしかないよ」と彼は言う。

キミ・ライコネン
キミ・ライコネン

「F1ドライバーは皆、ドライビングとレースのためにここにいるのであって、他のことは関係ないと思う。でも、どんなスポーツでも、スポーツ以外にやることはたくさんある。F1も同じで、それは僕がやらなければならないことの一部だった。そういうものなんだ」

20年経ってもF1マシンを走らせることにスリルを感じるのだろうか。そう尋ねると、彼は「そういう日もあれば、そうでない日もある」と認める。「朝9時から夕方6時まで同じコースを回っているんだからね」

「普通の生活では、いい日もあれば悪い日もある。朝起きて、今日はいい日じゃないなと思う日もある。F1も同じようなものだ」

「もちろん、マシンに乗っているときはいつでも、良い結果を出すように努力しなければならない。そして、チームとして良い結果を出せば出すほど、みんながハッピーになるんだ」

この通り、適切な場で適切な質問をすれば、ライコネンはそれなりに配慮した(そして爽やかで正直な)答えを返すことができるのだ。それに、彼は20年にわたるF1キャリアを、口先ではなく、実力で楽しんできた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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