アルファ・ロメオ・ジュリア GTAmでアルプス越え スーパーカーを目指したサルーン 前編

公開 : 2022.03.12 09:45  更新 : 2022.03.12 22:02

崇高なドライバーズカー、ジュリア GTAm。英国編集部は壮大な冬のアルプス山脈で、その魅力に迫りました。

ジュリア GTAmで冬のアルプス山脈を越える

イタリア北部に、バロッコという小さな町がある。トリノも含まれるピエモンテ州にある水田に囲まれた場所で、約250名の人が穏やかに暮らしている。

そんな牧歌的な景色が映し出されるのも、つかの間。アルファ・ロメオ TZ2のツインカム4気筒エンジンが、クオーッと轟音を響かせる。昼寝をしていた飼い犬が、驚いて塀の向こうに走っていく。

アルファ・ロメオ・ジュリア GTAm(欧州仕様)
アルファ・ロメオ・ジュリア GTAm(欧州仕様)

エンジニアは、笑みを浮かべながら仕上がりに自信を見せる。ボンネットの先端がわずかに高い、ステップノーズのアルファ・ロメオ・ジュリア・スプリント GTAがその後ろを追う。

こんな6分間のドキュメンタリー・プロモーション映像が、かつて存在した。ジュリア・スプリント GTAが誕生した翌年、1966年に制作されたもので、戦後最も輝いていた時代の名門ブランドの傑作マシンが、フィルムに残されている。

今回筆者は、フォトグラファーのマックス・エドルストンと一緒に、冬のアルプス山脈を越えることになった。このドキュメンタリーを、自ら再現するように。

もちろんクルマは、アルファ・ロメオ。しかもジュリアのロードレーサー、GTAmだ。案の定、旅は想定ほど順調には進まなかったけれど。

ジュリア・スプリントGTAの子孫

1966年のフィルムでは、欧州で最も整ったアルファ・ロメオのテストコースが、バロッコにあると説明されていた。レーシングマシンが磨き込まれ、そこで得られた知見は、量産車へ落とし込まれてきた。それは今でも変わらない。

ただし、現在のグーグルマップで見られるのは、映像とは別のコース。1970年代以降、試験場は約2平方kmに2つのコースという構成から、約4.7平方kmに27本のコースへと拡張されている。

アルファ・ロメオ・ジュリア GTAm(欧州仕様)
アルファ・ロメオ・ジュリア GTAm(欧州仕様)

ターマックにグラベル、高速オーバル、ワインディング、スキッドパッドなど多種多様。ピエモンテ州の田舎道を再現した、全長約21kmのランゲ・コースもある。

もはやTZ2は走っていないが、今ではステランティス・グループの施設として、純EVのフィアット500からSUVのプジョー3008まで、多彩なモデルが試験を重ねている。

かつてのジュリア・スプリント GTAは、サーキットから公道へフィードバックされた、代表的な1台だった。量産ラインから引き抜かれ、アルミニウムやマグネシウムなどで作られた部品が与えられた。

約200kgのダイエットを果たし、アルファ・ロメオが買収したアウトデルタ社によって、臨戦準備が整えられた。バロッコのテストコースを、全開で走り込んで。

レース参戦規定を満たすため、公道仕様のGTAストラダーレも500台が作られた。現在はクラシックカーとして価値を高め、35万ポンド(約5425万円)ほど用意しなければ、状態の良い例の入手は難しい。

うれしいことに、2022年をその子孫が生き抜いている。もはやオーダーは終了したが、15万ポンド(約2325万円)程度で新車に近いGTAmが流通している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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