WRCの栄光を市販車に スバル・インプレッサ P1とフォード・エスコート RSコスワース 前編

公開 : 2022.03.20 07:05  更新 : 2022.11.01 08:57

世界ラリー選手権での活躍が、量産モデルの販売へ結びついた1990年代。英国編集部が日英の王者を振り返ります。

身近にあったWRCとのつながり

1990年代の世界ラリー選手権(WRC)で華々しい成功を収めた、スバルフォード。その栄光は、市販車としてわれわれの身近な場所にあった。強力なターボを搭載し、ワイルドなボディで身を固めて。

1970年代から1980年代初頭、フォードはラリー界で暴れまくった。四輪駆動のアウディ・クワトロが戦いを一変させるまで、後輪駆動のエスコートには敵を寄せ付けない勢いがあった。

ブラックのフォード・エスコート RSコスワースとブルーのスバル・インプレッサ P1
ブラックのフォード・エスコート RSコスワースとブルーのスバル・インプレッサ P1

ラリー自体の人気も高く、フォードはメキシコにRS2000、RS1800といった特別仕様を量産車に展開。強い走りをビジネスに結びつけた。ラリードライバー、ビョルン・ワルデガルド氏を気取った若者が、英国の道路を賑わせたものだ。

1980年代に入るとFRの時代は終わり、エスコートのプラットフォームもFFへ転身。フォードのワークスチームは、シエラRS コスワースと、ミドシップのRS 200を主力マシンへ切り替えた。

しかし1990年代に入り、5代目エスコートが登場。基本性能に優れたコンパクトモデルとして、再びWRCへエスコートで挑んでいる。

同じ頃、デビッド・リチャーズ氏が率いるレーシングカー・コンストラクター、プロドライブ社は事実上のスバル・ワークスチームとして活動をスタート。最初のベース車は、スバル・レガシーだった。

プロドライブ社は着実な成功を収め、数年後にはコンパクトで身軽なインプレッサへスイッチ。1995年以降、3度に渡ってドライバーズ・タイトルと、マニュファクチャラーズ・タイトルの両方を掴み取っている。

高性能モデルへの需要が高かった英国市場

さて今回、英国南東部のブランズハッチ・サーキットへ、2台のネオヒストリックにお越しいただいた。ブラックのクルマはフォード・エスコート RSコスワース、ブルーの方はスバル・インプレッサ P1だ。

どちらも、ワークスチームの経験が落とし込まれたロードカーだ。インプレッサなら数年前は日本でもしばしば目にしたが、近年は見かける回数も少なくなった。英国でも、ノーマル状態のエスコートは貴重だ。

ブラックのフォード・エスコート RSコスワースとオーナーのグレッグ・エバンス氏。ブルーのスバル・インプレッサ P1とオーナーのボブ・フラー氏
ブラックのフォード・エスコート RSコスワースとオーナーのグレッグ・エバンス氏。ブルーのスバル・インプレッサ P1とオーナーのボブ・フラー氏

2台とも四輪駆動で、2.0Lの4気筒ターボエンジンがフロントに載っている。トランスミッションは、5速マニュアル。共通する部分も少なくないが、実際はかなり異なる。誕生プロセスも。

「1990年代後半、STiやWRXを冠した高性能なインプレッサが、並行輸入で日本から英国へ持ち込まれていました」。と、プロドライブ社のリチャーズ会長がインタビューで振り返る。

「当時、スバルUKの輸入を請け負っていたインターナショナル・モータースと協力し、われわれはインプレッサ・ターボのアップグレードを手掛けていました。そのなかで、英国市場の高性能モデルへの需要の高さを、強く実感したんです」

「そこで2000年に独自開発したのが、インプレッサ P1。欧州全土での型式認証を取得することで、スバルの欧州ディーラーを通じて、購入することを可能にしました」

「インプレッサ P1最大の強みは、英国の道路へ特化していたという点。並行輸入のクルマとは、基本的に異なります」

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    オルガン・コーダル

    Olgun Kordal

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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