レーシングチームとのコラボ ロータス・エラン BRM 最高傑作のベスト版 前編

公開 : 2022.04.02 07:05

レーシングチームのBRMがチューニングを施した、ロータス・エラン。貴重なを生存例を、英国編集部がご紹介します。

ロータスとBRMのコラボレーション

長い自動車史をさかのぼると、興味深いコラボレーション事例が少なくない。自動車メーカー同士のこともあれば、レーシングチームやドライバーとの協働という場合もある。

それが成功する時もあったが、残念な結果もゼロではなかった。フィアット・チンクエチェント・シューマッハや、フォードヒーレーフィエスタなど、過去には風変わりなモデルも登場している。

ロータス・エラン BRM SE(1967年/英国仕様)
ロータス・エラン BRM SE(1967年/英国仕様)

コラボレーションは、時として強い輝きを放つことがある。世界で最もハンドリングに優れたスポーツカーをベースに、一線で活躍するレーシングチームが手を施した、1967年の事例のように。

1960年代といえば、BRM(ブリティッシュ・レーシング・モータース)がF1でコンストラクターズ・タイトルを獲得した黄金期。コーリン・チャップマン氏が、代表作の1台を生み出した時期とも重なる。素晴らしい融合が生じても、不思議ではなかった。

チャップマンの傑作、初代ロータス・エランは、改めてご紹介する必要がないかもしれない。タイプ14 エリートの後継モデルとして登場した、小さな2シーター・スポーツカーだ。今でも、史上最高のロータスと評する人も少なくない。

強固なスチール製バックボーンシャシーに、軽量なグラスファイバー製ボディを結合。同時期のMGBやトライアンフ・スピットファイアが、リーフスプリングにオーバーヘッド・バルブ・エンジンなことを考えると、水準は別次元といっても過言ではなかった。

シャシーの能力を引き出したツインカム

そんなエランを成功へ結びつけた核心的な要素が、ツインカム・エンジン。小さく力強い心臓が、俊敏なシャシーに不足ない動力性能を与えた。

設計を手掛けたのは、技術者のハリー・マンディ氏。フォード社製の一般的な116Eエンジンブロックをベースに、最先端といえたDOHCヘッドが載せられている。

ロータス・エラン BRM SE(1967年/英国仕様)
ロータス・エラン BRM SE(1967年/英国仕様)

それまでロータスが採用していた、コベントリー・クライマックス社製ユニットより安価で、パワフルでもあった。シリーズ3のSEグレードでは、最高出力116psがうたわれた。

公道用スポーツモデルとして生まれたエランだが、世界中の人々はその可能性に注目。発売当初から、スプリントレースやヒルクライム・イベントで活躍した。より高い性能を引き出す、アフターマーケット市場も急速に拡大した。

チューニングに対する要望へ応えるべく、ロータス自らも高性能版のエラン 26Rをリリースする。だが、それ以上を求める周囲の声が止まることはなかった。

そこで、エランとBRMエンジンという融合を高めるべく、開発を任されたのがF1ドライバーのマイク・スペンス氏。BRMはエラン 26Rだけでなく、ヨーロッパのレーシング仕様、タイプ47用エンジンも供給しており、以前からロータスとの結びつきは強かった。

一方のスペンスは、1963年からコベントリー・クライマックス社製エンジンを搭載したロータス25で、F1グランプリを戦っていた。BRM社製エンジンを載せたマシンには、苦戦続きだったが。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・マクレマン

    Greg Macleman

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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