マクラーレンGTで車中泊 1日中楽しめるスーパーカーで24時間を過ごす 前編

公開 : 2022.03.26 09:45

マクラーレンGTは、本当に普段使いできるスーパーカーなのか? 英国編集部は24時間を過ごし、能力を確かめることに。

普段使い可能な1日中楽しめるスーパーカー

自動車ライターとして日々の仕事を楽しませてもらっている筆者だが、今ほど厳しい体験は珍しい。時間は午前3時45分。右側のお尻がしびれて、感覚がない。あばら骨がレザーシートに食い込んでいる。マクラーレンGTでの就寝は、難しい。

マクラーレンはモデルレンジのなかで、このGTをグランドツアラーに位置づけている。その名の通り。普段使いにも困らない、1日中楽しめるスーパーカーということだ。

マクラーレンGT(英国仕様)
マクラーレンGT(英国仕様)

そんな売り文句へ釣られるように、筆者は24時間、GTと過ごすことにした。馬鹿げた企画に思えるかもしれないが、だからこそ試す価値がある。

テストのルールはシンプル。グレートブリテン島の東、リンカンシャー州を出発し、一般道で西のノースウェールズ地方を目指す。基本的に、クルマから降りられるのは給油か休憩のみ。それ以外の理由で外へ出ることは許されない。

別のクルマで同行するのは、フォトグラファーのマックス・エドレストン。必要な食料と機材を、すべて積み込んだ。

マクラーレンGTは、上質な走り心地と類まれな操縦性とが融合している。躍動的なスーパーカーでありながら、時にはドライバーにも優しい。そんなジキルとハイド的な二面性を、筆者は24時間堪能できるだろうか。

出発はお昼。まずはリンカンシャー州から西へ延びるA52号線を走り、A1に合流して中部のダービーシャー州に入る。ピークディストリクト国立公園に存在したパブ、キャット&フィドル・インを目指すことにした。

仕切りのない荷室から聞こえる雑音

かつてその付近には滑らかなアスファルトが続く、気持ち良く走れる道路が伸びていたが、近年は交通量が多くスピードカメラも設置された。それでも、景色は素晴らしい。比較的低めの速度域でも、グランドツアラーとしての能力の一部は確かめられる。

冬の英国だから、天気は冴えない。のっぺりとグレーの雲が空を覆う。空気は湿っている。春に向けて気温は徐々に高くなってきていて、車中泊への心配は多少薄らいだ。

マクラーレンGT(英国仕様)
マクラーレンGT(英国仕様)

しばらく、エドレストンのクルマを追いかける。マクラーレンも、何故かわたしのスマートフォンも、グーグルマップが動かないためだ。16万3000ポンド(約2526万円)のスーパーカーなのに、アップル・カープレイは実装されていない。

走りは快適。110km/hほどで流れる片側2車線の道を、順調に進む。乗員側の空間と、エンジンルーム上の荷室、パーセルシェルフ部分との間に仕切りはない。後方からの雑音が、ラジオの音楽や電話での会話を邪魔する。

出発から2時間。お尻が痛くなってきた。エコノミークラス症候群を避けるため、休憩して足を伸ばすことにする。

ダービーシャー州に入っても、空はグレーのまま。石垣もグレーだ。山頂から霧が谷間に沿って流れてくる。木々は湿っていて、うらびれている。マクラーレンGTのベリーズブルー塗装が際立つ。

観光シーズンは始まっておらず、歩みの遅いキャンピングカーは少ない。それでも、COVID-19の規制が緩み始めているから、交通量は多いようだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ピアス・ワード

    Piers Ward

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

マクラーレンGTで車中泊 1日中楽しめるスーパーカーで24時間を過ごす の前後関係

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