ドリフトのやり方 初心者が見よう見まねで挑戦した結果…… 意外と難しい?

公開 : 2022.03.27 06:05

クルマを曲げてリアを振って、アクセルを調整して……。実際にドリフトをやってみると、意外と難しいものです。

ドリフトは本当に難しいのか?

Sプラットフォームの日産車が、大きく改造されたボディをエイペックスに対して荒々しく垂直に保ちながらコーナーを曲がっていく。

リミッターを解除した大馬力エンジンが猛烈な叫び声を上げ、後輪からは火砕流のごとく白煙が立ち上る。そのリアバンパーから1mほど離れたところでは、同じように改造されたマツダRX-7が、先行車の無茶なアタック角に合わせて追走している。2台が連動して、タイトなサーキットをドラマチックなスライドで次々と駆け抜けていく。

ドリフト・リミッツ・モータースポーツ・アカデミーでの練習風景。
ドリフト・リミッツ・モータースポーツ・アカデミーでの練習風景。    AUTOCAR

エンジン音とタイヤのきしむ音が喧しくても、その動きは見事に調和している。あまりに優雅な動きに、「クルマをこんな風に走らせるのは本当に大変なことなんだろうか」とさえ思えてくる。

過去にも同じような疑問を抱いたことのある筆者は、このドリフトという競技の真相に迫りたいと思った。そんなわけで、YouTubeでドリフト動画を見まくって、自信満々で英ハートフォードシャー州にあるドリフト・リミッツ・モータースポーツ・アカデミー(Drift Limits Motorsport Academy)に乗り込んだのである。

カリキュラムは単純だった。インストラクターのビルから2代目マツダMX-5(ロードスター)で基本を学び、後半はパワフルな日産350Zに乗り換えるというもの。うまくいけば、初心者から、ドリフトを何回かつなげられる中級者になるはずだ。

初心者の焦り 頭では分かっていても……

さて、今回使用するクルマは、競技用ドリフトほどに改造はしていないものの、まったくのノーマルというわけでもない。リヤデフを溶接したり、サスペンションに手を入れたりして、スライドの誘発とボディロール抑制を図っている。また、初心者がスライドしやすいよう、専用コースには植物油と水を混ぜた潤滑油も使われている。

サーキットのレイアウトを確認した後、ビルは基本的なことを教えてくれた。簡単に言うと、大きく分けて3つの段階がある。まずはイニシエーション、きっかけ作りだ。速度を上げた後にアクセルを離して荷重を前に移動させ、ハンドルを1/4程度回してターンインし、素早くアクセルを踏み込んで離すとスライドが始まる。

2代目マツダMX-5(ロードスター)は軽快だが、なかなかコツを掴むことができない。
2代目マツダMX-5(ロードスター)は軽快だが、なかなかコツを掴むことができない。

次に、持続的にアクセルを踏んでドリフトを掴む必要がある。最後に、スロットルとステアリングの入力のバランスをとりながら、コーナー出口までドリフトを維持する。このときは、できるだけクルマに任せる。簡単そうだろう?

しかし、現実はまったく違う。ステップを学ぶことはできても、それを実行に移すのは、また別の問題だ。だから当然といえば当然なのだが、最初の数回は、すぐにスピンしてしまった。

コーナー入り口に向けて37km/hまで加速し、進入ポイントの手前で車両1~2台分ほどアクセルを離し、荷重が軽く前に移動するのを感じながら、ハンドルを切り、クルマがゆっくりと回転し始め、アクセルを踏んだり離したりして滑りを大きくする……が、スロットルの開け過ぎや少なすぎで掴みそこね、結局まっすぐになるか反対を向くかした。イライラがつのる。

MX-5はホイールベースが短いので、特にキビキビとした動きを感じる。また、手や足を使って積極的に何かをしたいという初心者の気持ちが、失敗の確率を高めていた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・デイビス

    Simon Davis

  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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