時代の最高速モデル 1940年代 ジャガーXK120 ベルギーの高速道路で213.4km/h
公開 : 2022.04.17 07:05
クルマの性能を端的に表す指標の1つ、最高速度。過去100年間を振り返り、各年代の最速モデルをご紹介します。
もくじ
ースポーツカーに対する考え方を一変させた
ーベルギーの高速道路で213.4km/hを達成
ー直列6気筒エンジンの威勢のいい排気音
ークルマが積極的に走りたいと訴えてくる
ージャガーXK120(1948〜1954年/英国仕様)のスペック
スポーツカーに対する考え方を一変させた
今回の最高速企画の10台で、インフレによる貨幣価値の変化を考慮し、最もお手頃な英国価格で売られていたのがジャガーXK120。世界最速の量産車が、1948年に1263ポンドで買うことができた。
ところが、ジャガーを創業したウィリアム・ライオンズ氏は、このXK120にさほど期待を寄せていなかったようだ。その時期に彼が熱意を込めていたのは、ジャガー初の時速100マイル(160.9km/h)サルーン、Mk VIIだった。
Mk VIIの長いボンネットに搭載されたのは、ウィリアム・ヘインズ氏とクロード・ベイリー氏、ウォルター・ハッサン氏という腕利き技術者チームによって開発された、まったく新しい直列6気筒ユニット。極めて洗練されたエンジンだった。
しかしMk VIIの完成は、1948年のロンドン・モーターショーに間に合わなかった。かわりに展示されたのが、スポーツモデルのXK120だ。
来場者は、新しいジャガーに圧倒された。艷やかで斬新なスタイリングを身にまとった2シーター・ロードスターは、スポーツカーに対する英国人の考え方を一変させたといっていい。
シャシーとエンジンは、大幅に改良を受けていたものの、サルーンのMk VIIと基本的には同じもの。低く流れるような流線型のボディには、リアタイヤを覆うスパッツや、傾斜した小さなフロントグリルが与えられていた。全身でスピードを表現していた。
3.4Lの直列6気筒エンジンは、半球型の燃焼室を備えるダブル・オーバーヘッド・カム(DOHC)を採用。最大トルクは2500rpmで26.9kg-mを発生し、最高出力は162psを誇った。
ベルギーの高速道路で213.4km/hを達成
シャシーはスチール製で、サスペンションはフロントが独立懸架式。ボディは当初アルミニウムで作られていたが、1950年にスチール製へ置き換えられた。ジャガーが世界へ打ち出した、自動車の進むべきお手本といえた。
優れた能力は、最高速度として表れた。ジャガーの開発ドライバー、ロン・サットン氏の運転で、ベルギーのオーストエンデ=ヤブベーケ間を結ぶ高速道路を走行。時速126.4マイル(203.4km/h)という記録が、ベルギー王立自動車クラブに認定されている。
ベルギーを走ったXK120は、ギア比が若干高められていたものの、それ以外はノーマル状態だった。後日、大きなスプリットタイプのフロントガラスを小さなシングルガラスへ変更し、時速132.6マイル(213.4km/h)へ記録を更新してもいる。
当時のモーター誌のテストでも、XK120 ロードスターのプロトタイプは静止状態から97km/hまで10.0秒で加速。ソフトトップとサイドガラスを閉めた状態で、時速124.6マイル(200.5km/h)の最高速度を出している。
モータースポーツで、ジャガーXK120は圧倒的な強さを披露した。ル・マン24時間レースのほか、イタリアの公道レース、タルガ・フローリオやミッレ・ミリアといった主要イベントから参戦を退けられるほど。
ラリーでも活躍し、英国RAC(ロイヤル・オートモビル・クラブ)ラリーでは、イアン・アップル氏が2度の優勝を獲得。1951年にオランダで開かれたチューリップ・ラリーや、シチリア・ゴールドカップ・レースでも勝利している。