概念を超越した速さ ブガッティ・シロン・スーパースポーツへ試乗 480km/h超の公道仕様 前編

公開 : 2022.04.06 08:25  更新 : 2022.04.12 13:43

時速300マイル(482.8km/h)の壁を打ち破った、W16気筒のシロンSS 300+。公道仕様を英国編集部が味わいました。

シロン・スーパースポーツ 300+の公道仕様

フランス西部、モルスアイムにあるブガッティ工場から、少し南へ移動したビショフスハイムという町のスポーツセンターまで、クルマで6分ほど。距離は6km程しかない。

そんな至近の隣町まで、ブガッティのテストドライバー、アンディ・ウォレス氏はシロン・スーパースポーツを走らせる。4000rpm程度の回転数で900馬力を発揮する、同社最新のハイパーカーの片鱗が見え隠れする。

ブガッティ・シロン・スーパースポーツ(欧州仕様)
ブガッティ・シロン・スーパースポーツ(欧州仕様)

黒い勇姿の登場に、スポーツセンターへトレーニングしに来た学生が驚く。イストラクターと思しき男性も、遠巻きに眺めている。このクルマの存在感に、圧倒されているのだろうか。

公道用モデルとして、ウォレスは一般道でもシロン・スーパースポーツの走行テストを重ねている。とはいえ、W型16気筒クワッドターボ・エンジンの最高出力は1600psもある。スピードリミッターは付いているが、440km/hまで作動しない。

これは、彼が運転し時速300マイル(482.8km/h)の壁を打ち破った、シロン・スーパースポーツ 300+の公道用レプリカと呼ぶべきクルマ。インテリアは、通常のラグジュアリーなシロンに近い。高品質なレザーがふんだんに用いられ、居心地が良い。

メカニズムは、基本的にシロンのレコードマシンと変わらない。0-100km/h加速は2.4秒、0-200km/h加速も5.8秒でこなす能力を秘めている。

0-400km/hは28.6秒 最高速度は482km/h

近年の超高性能な純EVも、似たような加速力を備えているから、驚く数字ではないかもしれない。そう書いていて、呆れてしまうけれど。

だがシロンなら、さらに加速できる。0-300km/h加速ですら、たった12.1秒。静止状態から400km/hまでも、28.6秒でこなす。

ブガッティ・シロン・スーパースポーツ(欧州仕様)
ブガッティ・シロン・スーパースポーツ(欧州仕様)

充分なストレートがあり、アクセルペダルを全開に保てば、加速が続き最高速度の482km/hへ迫れる。その状態では、100Lのガソリンタンクは8分間で空になるという。

この最高速度は、現在の純EVでは達成が難しいという。技術的に、生じる加熱を抑えきれないためだ。しかし、ブガッティの筆頭株主で純EVスペシャリストのリマック社は、その解決に取り組んでいるに違いない。

異次元といえる速さで走行していると、ガソリンだけでなく、タイヤもすぐに磨り減ってしまう。専用のミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2タイヤも、超高速域で走行した場合は、短期間での交換が指定されている。

それだけのガソリンを燃焼させるのだから、エンジンが吸い込む空気の量も半端ない。シロン・スーパースポーツのインダクションシステムは、最大で1秒間に1000L(!)という体積の空気を、16本のシリンダーへ送り込むという。

英国価格275万ポンド(約4億4000万円)という価格にも驚かされるが、この驚愕の数字を並べるために投じられた技術力は相当なものだろう。運転の楽しさが、モーガン3ホイラーを超えるかどうかは別として。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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