思いがけない成功? フォルクスワーゲン・グループ、記録的収益を達成 2021年決算

公開 : 2022.03.30 18:45

半導体不足の中、VWグループは自動車1台あたりの利益が33%増加するなど記録的な業績好調を見せました。

新車販売860万台で166億ユーロの利益

フォルクスワーゲン・グループの会計年度の成功度合いを測る良い方法の1つが、CEOであるヘルベルト・ディースの業績連動型賞与だ。2021年、彼は529万ユーロ(約7億1600万円)を追加で受け取り、報酬の総額は860万ユーロ(約11億6500万円)に達した。

自動車業界にとって困難な年に、なぜディースは他の役員とともにこれほどまでに報われたのだろうか。それは、グループ全体で860万台の新車を販売し、200億ユーロ(約2兆7000億円)の利益を上げたからである。

アウディ、ポルシェ、ベントレー、ランボルギーニなど高価格帯の高級車ブランドが利益増を牽引した。
アウディポルシェベントレーランボルギーニなど高価格帯の高級車ブランドが利益増を牽引した。

2019年の1100万台で193億ユーロ(約2兆6000億円)の利益と比較すると、その差は歴然だ。別の言い方をすれば、昨年自動車1台あたりの利益2325ユーロ(約31万5000円)は、感染症の混乱や半導体不足がなかった年に比べて571ユーロ(約7万7000円)増加したことになる。

業界全体では、いわゆる半導体危機が実質的に利益を押し上げることになった。

「グループ全体の自動車販売台数は6.3%減少しましたが、利益率の高いモデルに多くの部品を割り当て、販売奨励金を減らしたため、売上高は12%増の2500億ユーロ(約33兆8000億円)になりました」と、ディースは金融アナリストに語っている。

価格が高ければ利益率も多くなるため、比較的低価格のフォルクスワーゲン・ゴルフの生産はなんと35%も落ち込んだが、グループの高級車ブランドが運営する工場はフル稼働していた。

ランボルギーニは、8405台という記録的な販売台数で20%の利益率を確保した。ベントレーも同様で、過去最高の1万4594台を販売し14%の利益率を確保した。両ブランドとも、ベストセラーSUVであるウルスベンテイガの需要を生かしている。

アウディは、SUVのQ5を中心に販売台数が若干減少したものの、100万台の販売で55億ユーロ(約7450億円)の利益を計上し、2020年の約2倍となる健全な業績を達成した。アウディは、この好調は「主に価格設定の大幅な改善によるもの」だと述べている。つまり、値引き幅を減らし、高価格帯のモデルに注力したのだ。

ポルシェは、販売台数が30万台弱とアウディの3分の1以下だったにもかかわらず、50億ユーロ(約6770億円)の利益を計上し、アウディに肉薄した。つまり、ポルシェの販売台数あたりの売上は10万ユーロ(約1350万円)を超えたところで、そのうち1万7000ユーロ(約230万円)が利益となったのである。大型SUVのカイエンが再びベストセラーとなり、次いで中型SUVのマカンが続いた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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