電動化したマセラティってどうなの? デザイン責任者にブランドの未来を問う
公開 : 2022.04.02 18:05
小型SUVの投入や、3年以内のラインナップ電動化など、革新を続けるマセラティの未来を当事者に訊きました。
グレカーレと既存モデルの違いとは
これまでのマセラティは、一旦忘れた方がいい。最近、15年ぶりにスーパーカーを発売し、売れ筋モデルにハイブリッドを導入し、新たな小型SUVを披露したマセラティは、2025年までに内燃エンジン車の生産を終わらせるべく、急速に電動化を推進している。
こうした動きはどの自動車メーカーにおいても革命的なことだが、モータースポーツの伝統に彩られ、V8の轟音と本質的に結びついた107年の歴史を持つマセラティにとっては、抜本的な革新以外の何物でもないだろう。親会社ステランティスのデザイン担当副社長であるクラウス・ブッセにとって、これはブランドイメージを一新するチャンスである。
マセラティにどのような新提案を行ったのか、そしてマセラティの電動化によって次に何が起こるのか、そのヒントを得るために、グレカーレのベールを解いたブッセに話を訊いた。
――新型グレカーレとレヴァンテの差別化はどのように行われたのでしょうか?
「レヴァンテ、ギブリ、クアトロポルテは、デザイン的に1つのファミリーとなっていますが、(グレカーレの)デザインのDNAは、約3年半前にグレカーレとMC20の開発を始めたときに、マセラティの新章を作ろうと思って描いたものなんですよ。MC20は重要な新しいマイルストーンであり、デザインにおいても一歩前進する価値があったのです」
「レヴァンテは水平基調のデザインなので、このプロセスで自動的に差別化が図れます。ギブリ、クアトロポルテ、レヴァンテは、どれもボディにラインワークが多い。グレカーレではエンジニアと一緒になって、ラインを取り去り、ボディそのものに集中することで、クリーンなものにすることができました」
「映える」クルマは作りたくなかった
――今後のマセラティには、どのような要素が盛り込まれるのでしょうか?
「MC20ですでにご覧いただいたもので、低い口元と高い位置にあるライト、そしてライトシグネチャーといった特徴です。MC20、グレカーレ、そして今回発表されたグラントゥーリズモ(次期型)に見られる、マセラティの新しい顔です」
「純度を極限まで高めながら、その中でエンジニアが機能・性能を表現するというフィロソフィーが重要でした。このデザインDNAを生み出す際に、社会を文脈として見つめたのです。我々はどこにいて、社会はどこに向かっているのか?と」
「いわゆる『インスタ映え』するクルマをデザインしたかったわけではありません。『わたしを見て』と叫ぶような、アグレッシブすぎる外見のクルマもデザインしたくはなかった。マセラティを見れば、その環境が美しくなるような、視覚的な価値を付加するクルマをデザインしたかったんです」
「特にイタリアでは、デザインとはプロポーションとフォルムのことであり、装飾的で二次元的な特徴や折り目、不必要なエアインテーク、あるいはフェイクのエグゾーストパイプは禁じ手のようなものです」
「デザインにはある種のオーセンティックさがありますが、何よりもピュアなのです」