【詳細データテスト】フォルクスワーゲン・トランスポーター 平凡な走り 盛大なノイズ あくまでバン

公開 : 2022.04.09 20:25  更新 : 2022.04.26 03:09

GTI的ルックスの商用バンは、広大な車内空間に、スポーティな外見に見合った走りが融合すれば理想的でしたが、現実はそれほど甘くはなく、走行性能も快適性も乗用車慣れしたユーザーの眼鏡に適うものではありませんでした。

はじめに

新たな商用車に、スポーティなスタイリングで目を引くものが増えている。これは、バンやトレーラー、ピックアップトラックなどが、乗用車市場のトレンドに追従するのが必然だということを証明しているのかもしれない。

しかし、今回のテスト対象は、なにかもっとおもしろいことが起きているのを示している。こうした機能性に特化した、激務に供される商用車の購買層のなかには、これまで以上に本気のパフォーマンスカー風バンを待ち望んでいるという声もあるだろう。それで価格が驚くほど上がることもいとわない、という声が。

テスト車:フォルクスワーゲン・トランスポーター・スポーツライン・コンビSWBブラックエディション
テスト車:フォルクスワーゲン・トランスポーター・スポーツライン・コンビSWBブラックエディション    LUC LACEY

トランスポーター・スポーツラインは、フォルクスワーゲンの中型バンの最上級バージョンだ。T6こと現行世代は2021年にマイナーチェンジを受け、T6.1と呼ばれるようになったが、その改良直後に追加されたのがこの仕様だ。

このモデルにおける変更点は、小ぶりなルーフスポイラーや、アグレッシブなルックスのフロントバンパーにとどまらない。ホイールは18インチのアルミで、パフォーマンス志向のタイヤを履く。足回りはローダウンしたスポーツサスペンションを装備し、室内にはハーフレザーのスポーツシートが奢られる。スポーティなコスメをちょっと追加した、だけではないのだ。

なにゆえ、2.1tのワンボックスに、そこそこ本気でホットハッチのような装いを与えたのか。それで、走りの訴求力を高めているのか。それとも、はぶりのよさを世間に触れ回りたい経営者のための、単なる見掛け倒しなのだろうか。

たとえどちらであっても、このクルマが最優先するべき実用性と機能性によからぬ影響を与えていては元も子もない。その辺りを確かめてみたいと思う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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