1人目の顧客は「王子」! プロドライブ・ハンターT1+ 600馬力超の公道走行仕様、4月に英国デビュー

公開 : 2022.04.11 20:25

プロドライブのダカール・ラリー参戦マシン「T1+」の公道仕様がまもなく公開。ラリー仕様より強力です。

ダカール・マシンの公道仕様 顧客はあの人

英国のレーシングカー・コンストラクターであるプロドライブ(Prodrive)は、4月21日にロンドンのサロン・プリヴェで、最新のダカール・ラリー参戦車両「BRXハンターT1+」の公道走行仕様を初公開する。

バーレーンのサルマン・ビン・ハマド・アール・ハリーファ皇太子のために作られたこの車両は、今後2年間に25台が生産される予定であり、価格は125万ポンド(約2億円)からとなっている。AUTOCARは完成車第1号車の試乗をロンドンで行ったばかりだ。

プロドライブ・ハンターT1+
プロドライブ・ハンターT1+    プロドライブ

プロドライブの会長であるデイヴィッド・リチャーズは以前、ハンターT1を「砂漠のフェラーリ」と呼び、世界最速の市販クロスカントリーとして製作したと語った。プロドライブのパンフレットには、説得力のある一行が掲載されている。「我々が行くところには、道路は必要ない」

公道仕様とラリー仕様には、何十もの違いがあるものの、外観は大きく変わらない。いずれも、元ジャガーのデザイン責任者、イアン・カラムの手によるボディを使用している。公道仕様は全長4600mm、全幅2300mm、空力重視のファストバックスタイルで、リアウィンドウ上にダウンフォースを発生させるウィングを備えているが、全高は1850mmとラリー仕様より100mm以上低い。

また、今年のダカール・ラリーに参戦する3台のチーム車両と同じ鋼管製スペースフレームシャシーを採用している。2022年モデルのT1は、2021年モデルのスタイルを引き継いではいるが、中身は大幅に改良されている。公道仕様も、最新の仕様に準拠している。

フォード製3.5L V6搭載 最高出力600ps以上

17インチホイールに38インチの大型タイヤが装着され、昨年のラリーで問題となった数十回のパンクへの対処としている。後輪前方のサイドポッドにスペアを収納するスペースも確保されている。

また、プロドライブが設計した超ロングトラベルのツインショック・コイルサスペンションを全輪に装備。エアジャッキを内蔵しているので、砂漠走行では欠かせないタイヤ交換も素早く行うことができる。

プロドライブ・ハンターT1+
プロドライブ・ハンターT1+    プロドライブ

公道仕様の開発を担当するエンジニア、マーク・パターソンによると、主な仕様のほとんどはラリー仕様と同じだが、細部には異なる点が多くあるという。

インテリアには可能な限り消音材が使われ、競技用シートは少し快適な形状に変更され、480Lの巨大な燃料タンクを縮小してトランクを広くしている。パターソンいわく、「顧客は週末を砂漠でドライブするような人ですから、少しは荷物が必要でしょう」とのこと。

エンジンは同じフォード製のドライサンプ式3.5LツインターボV6で、公道仕様専用のセッティングが施されている。

形式上はフロントエンジンと呼ばれる設計だが、その搭載位置はコックピット内にカバーが50cmはみ出すなどミドシップに近い。公道仕様の最高出力は600ps以上、最大トルクは71.3kg-mで、FIA規定のラリー仕様より200psほど高い。両仕様ともレッドラインは6500rpmだが、ラリー仕様のシフトランプは5500rpmにセットされている。トランスミッションは6速パドルシフト付き、駆動方式はフルタイム四輪駆動だ。

0-100km/hは4秒以下、最高速度は300km/h近くと予想される。

リチャーズによると、すでに「3、4人」の顧客が同車に興味を持っており、ロンドンでのデビュー時にはさらに多くの顧客を集めると見込まれている。プロドライブはディーラーを介さず、顧客と直接取引する。「このクルマを欲しがる人は、普通のクルマを買う人とは違うでしょう。どこに行けばいいのか、わかるはずです」とリチャードは話す。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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