時代の最高速モデル 2000年代 ブガッティ・ヴェイロン 16.4 W16気筒で407.1km/h

公開 : 2022.04.30 07:05

クルマの性能を端的に表す指標の1つ、最高速度。過去100年間を振り返り、各年代の最速モデルをご紹介します。

ピエヒ氏の夢を実現させたようなクルマ

かつてないほど大胆な発想で生み出された量産モデル、ブガッティ・ヴェイロン 16.4。フォルクスワーゲン・グループの元会長、フェルディナント・ピエヒ氏の子供時代の夢を実現させたようなクルマだった。

ブガッティというブランドを再生させ、1000馬力のエンジンを積み、400km/h以上の最高速度を叶えたスーパーカーだ。新車時の価格は100万ユーロに達していた。

ブガッティ・ヴェイロン 16.4(2005〜2011年/欧州仕様)
ブガッティ・ヴェイロン 16.4(2005〜2011年/欧州仕様)

しかし、その目標の高さ故に計画は順調に進まなかった。コンセプトが発表されたのは、1999年の東京モーターショー。前例のないW型18気筒エンジンを搭載する意欲作に、結成間もない技術者チームは手を焼いていた。

それを打開したのが、2003年に技術部門のトップに就任したヴォルフガング・シュライバー氏。元レーシングドライバーのトーマス・ブシャー氏も加わり、プロジェクト全体が再考された。最終的に、全体の95%が再設計されたという。

そして2005年、フランス・モルスアイムに復活したブガッティとして初の量産モデル、ヴェイロンが誕生する。エンジンは2気筒減り、W型16気筒になっていた。

フォルクスワーゲン・グループが、フランスの名門、ブガッティを買収したことに懐疑的な人もいた。しかしヴェイロンの発表で、創業者のエットーレ・ブガッティ氏や息子のジャン・ブガッティ氏に対する見方も改められることになった。

創業時から自動車技術に革新を与え、レーシングカーやラグジュアリー・モデルを生み出してきた歴史にも、再び注目が向けられたのだ。

W16気筒クワッドターボ・エンジンは1001ps

ヴェイロンは、今でも驚くような技術が詰め込まれている。4基のターボで過給される8.0L W16エンジンは、1001psを発生。最大トルクは127.2kg-mと3桁あり、最高速度は407.1km/hが主張された。

熱を大量に生み出す、ほぼむき出しのエンジンを冷却するラジエターは10基。怒涛のパワーを無駄なく路面に展開するため、ハルデックス・デフを備える専用の四輪駆動システムも開発されている。

ブガッティ・ヴェイロン 16.4(2005〜2011年/欧州仕様)
ブガッティ・ヴェイロン 16.4(2005〜2011年/欧州仕様)

トランスミッションは、変速時間が0.15秒という極めて迅速な、7速デュアルクラッチ・オートマティック。リアにはリミテッドスリップ・デフも備えている。

必要なメカニズムで膨らんだ車重は、2tに迫る重量級。400km/hから強力な減速を得るには、直径400mmという巨大なカーボンセラミック・ブレーキも必要になった。

そして何より、マクラーレンF1の386.4km/hという最高速記録を打ち破った立役者は、W型16気筒クワッドターボ・エンジンだろう。当時、最も潤沢に高度な技術が投入された量産ユニットでもある。

ベースは、フォルクスワーゲン・パサートが搭載していた狭角W型8気筒エンジン。2基を結合し16気筒とし、1対のカムシャフトが32枚のバルブを制御した。

シリンダーはスクエア構造で、ボアとストロークはともに86mm。1気筒の排気量は499.56ccだ。ターボチャージャーは各バンクに2基が組まれ、冷却水も用いた特殊なインタークーラーを介し、吸気は18psiまで加圧された。

燃費も桁違い。フルスロットルを保ち続けられれば、100Lのガソリンタンクを20分で空にすることが可能だった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    オルガン・コーダル

    Olgun Kordal

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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