航続距離1000kmの近未来 メルセデス・ベンツ・ビジョンEQXX 試作車へ試乗 前編

公開 : 2022.04.24 08:25

メルセデス最新の純EVサルーン・コンセプトへ英国編集部が同乗。クルマの近未来像を体験しました。

1007kmを1度の充電で走破したEQXX

メルセデス・ベンツ・ビジョンEQXXは、クルマの現実的な未来といえる。新しい鋳造製法による軽い車体がまとう滑らかなフォルムに、転がり抵抗の少ないタイヤと細いホイール。高効率な駆動用モーターと、最新の駆動用バッテリーを載せている。

このクルマのミッションは、今後の量産モデルへ展開できる技術開発を、エンジニアへチャレンジさせること。自動車業界全体に訪れた大変革期にあって、世界最古の自動車メーカーが最前線に留まれるよう、取締役会によって推進されたという。

メルセデス・ベンツ・ビジョンEQXX プロトタイプ
メルセデス・ベンツ・ビジョンEQXX プロトタイプ

構想と開発に費やされたのは、約2年間。そのミッションが、カタチとして姿を表したというわけだ。

ビジョンEQXXは先日、ドイツ・シュトゥットガルトのメルセデス・ベンツ開発センターから、フランス南岸のニースにある同社のデザインスタジオまで、1度の充電で走り切った。充電ポートが封印された状態で。

その距離、1007km。平均速度は87.3km/hで、電費は11.5km/kWhだった。現在の純EVの、倍以上の効率を持つ。ニースに着いた時点では、まだ140km走れる電気が残っていたそうだ。

ちなみに、90.6kWhの駆動用バッテリーを搭載するメルセデス・ベンツEQEの電費は、5.3-6.2km/kWh。航続距離は659kmがうたわれている。

ビジョンEQXXの凄さが伝わってくる。ニースまで走った日は平均気温が3度と低く、区間によっては風が強く雪も舞っていたというから、ベスト・コンディションだったとは決していえない。

滑らかで前後に長く未来的なルックス

ビジョンEQXXは、メルセデス・ベンツのデザイナーと空気力学を専門とする技術者によって、ボディデザインが導かれている。滑らかで前後に長く、とても未来的なルックスだ。テールまわりは、2015年のコンセプトカー、IAAにも通じている。

フロントノーズは低く傾斜し、ボンネットは短め。ホイールアーチが大きくフェンダーが丸く膨らみ、スポーツカーのようにも見えると思う。

メルセデス・ベンツ・ビジョンEQXX プロトタイプ
メルセデス・ベンツ・ビジョンEQXX プロトタイプ

空気抵抗を極力抑えつつ、一般的な量産車と同等の車内空間や実用性も与えられている。ボディには、フロントヒンジのドアが4枚備わっている。

長年ブランドらしさの象徴でもあったフロントグリルは、バンパーへ吸収された。よく見ると、細かく丸いテクスチャーが与えられている。スリーポインテッドスターは、ボンネットの上。左右へつながった細いヘッドライトは、LEDだ。

サイドミラーは小さなカメラではなく、従来的な鏡が用いられた。既存モデルより遥かに小ぶりだが、カバーの形状が工夫され空気抵抗は良いそうだ。

フロントガラスの位置は前寄り。キャビンは滑らかに後方へ向けて絞られていく。一方でショルダーラインは、リアタイヤに向けて膨らんでいく。左右タイヤの間隔、トレッドは、リアがフロントより50mmも狭い。

ホイールは20インチ。ホイールハウス内の気流を最小限に抑えるため、専用デザインのディッシュタイプになっている。タイヤは185/65というサイズのブリヂストン・トゥランザ・エコ。素材は、ビジョンEQXXのために特別配合された。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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