50年後に価値上昇のモデルは? 中編 知る人ぞ知る魅力:アルピーヌA110 先見の明:BMW i3
公開 : 2022.05.07 09:46 更新 : 2022.05.07 17:03
近年発表されたモデルのなかで、将来クラシックとして価値が高まるものは? 英国編集部が注目の5台を選出しました。
目の肥えたクルマ好きのためのアルピーヌ
今回の審査では、最終的な5台の選出にかなり悩んだ。多くの議論も重ねた。だが、アルピーヌA110は別格。運転したことのない審査員ですら、50年後のクラシックカーとしての可能性を評価していた。運転したことのある審査員は、確信を持っていた。
アルピーヌA110は、とても貴重で特別だ。目の肥えたクルマ好きのための、コンパクトな2シーター・スポーツカーといえ、スタイリングも美しい。
上品なレトロさがあり、走りを期待させるように低く小柄。多くがアグレッシブさを強め、空力的な付加物を増やす現代にあって、純粋にフォルムが綺麗に見える。
ここ10年の間に登場したスポーツカーとして、A110は最も高く評価され、影響力を持った1台だといえる。マツダMX-5(ロードスター)やポルシェ911も、最後の5台に残ることはできなかった。
控えめな最高出力だけでなく、商業的な不振にも、疑問を感じなくはない。アウディやBMW、ポルシェから、顧客を引っ張ってくることは簡単ではない。2017年、アルピーヌが22年ぶりに帰ってきた時には、ブランドの認知度はだいぶ薄れていた。
復活を強く望む潜在的な購買層も、多くはなかったのだろう。だが、知る人ぞ知るブランドでもあった。自動車評論家からの称賛は、他に例がないほど高いものだった。50年後にも秀でた評価を得ることは、間違いないと思う。
ロータスに通じるDNAを感じ取れる
A110のバックグラウンドと、2024年に生産終了予定という事実も、今後の価値をしっかり支えるはず。
復活したアルピーヌは、ルノーとケータハムによる合弁事業だった。マレーシアの投資家、トニー・フェルナンデス氏の資金も投じられた。過去には、F1チームのロータス・レーシング(現:ケータハムF1)のオーナーだったこともある人物だ。
アルピーヌを運転すれば、ロータスに通じるDNAを感じ取ることができる。コンパクトなアルミニウム製のタブシャシーには、4気筒エンジンがミドシップされている。速いだけでなく、類まれな軽さも兼ね備えている。
小さなボディサイズは、英国郊外の狭い一般道にもフィットする。ストロークの長い、ダブルウィッシュボーン・サスペンションも同様だ。テーラーメイドのフレンチ・ファッションで身を包んだ、ブリティッシュ・スポーツカーともいえるだろう。
軽量なシャシーの能力を公道で開放するのに、不足ない動力性能を得ているが、近年の高性能モデルのようなやり過ぎ感はない。より大きくパワフルなクルマでは得難い、生き生きとしたドライビング体験を与えてくれる。実用性も備える。
数年後には、アルピーヌは純EVブランドへシフトしてしまう。内燃エンジンを積んだA110も、絶たれる。
多くの絶賛を集めながら、期待ほど売れなかったA110。多くのドライバーにとっては、現実味のない存在かもしれない。しかし、その深い味わいを知る少数のオーナーは、その将来性も理解しているに違いない。
アルピーヌA110 リネージGT(英国仕様)のスペック
英国価格:6万1655ポンド(約1029万円)
全長:4205mm
全幅:1800mm
全高:1250mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:4.4秒
燃費:14.3km/L
CO2排出量:153-158g/km
車両重量:1134kg
パワートレイン:直列4気筒1798ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:292ps/6400rpm
最大トルク:32.5kg-m/2000-6400rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック