フィアット500e試乗 チンクのDNA、BEVになっても違和感なし

公開 : 2022.04.28 05:45

フィアット500eに試乗。新設計の500はBEVの重さも効いて走り心地良好。見た目も装備も完成度は高い1台です。

ちゃんと「500」 でも完全新設計

おなじみ「21世紀の」フィアット500は今年でデビューから15年目。

なかなかのロングライフだなぁと思っていたら、以前から度々登場がうわさされていたニューモデルが追加されることになった。

フィアット500eオープン。サイズは500よりひと回り大きい。
フィアット500eオープン。サイズは500よりひと回り大きい。    宮澤佳久

車名はフィアット500e。eの文字が示すとおりBEVである。

500eのデビューで既存の500のラインナップがすぐに影響を受けるわけではない。

けれど実質的にこれはICE車からBEVへの緩やかな世代交代の一環になるのだろう。

500と500eを横並びにしてみると、似ているようでたしかに違う。

96%のパーツが異なるということは完全な新設計。

サイズ的にも500eの方が上着を1枚羽織ったような感じで大きく見える。

最高出力118psのモーターはフロントに配置されるので駆動はFFとなる。

42kWhのバッテリーは床下に配置され、WLTCモードで335kmの航続距離を実現している。

だが実車を目の前にすると、そんなBEVについてまわる社交辞令的なハナシはどうでもよくなる。

これまでのフィアット500がそうだったように、新しい500eも見た目のかわいらしさ、存在感がすばらしい。

それに加え、BEVらしい未来感もちゃんと含まれているのだ。

ラインナップは500eポップ(450万円)、500eアイコン(485万円)、500eオープン(495万円)の3車種。

ちょっと高めに思えるが、CEV補助金の上限である65万円が適用される点は朗報といえるだろう。

乗り心地 小さな高級車のごとし

最初に試乗したのはセレスティアルブルーの500eポップだった。

エントリーグレードのポップは受注生産で、一方の500eオープンの装備関係は屋根の開閉機構を除けば上位モデルの500eアイコンに準じている。

フィアット500eは、床下バッテリーの重さが効いているのか、ひと回り以上大きくて上質なクルマの乗り心地が味わえると筆者。
フィアット500eは、床下バッテリーの重さが効いているのか、ひと回り以上大きくて上質なクルマの乗り心地が味わえると筆者。    宮澤佳久

フィアット500のBEV版であることを匂わせるエクステリアに対し、インテリアも負けていない。

運転席からの眺めはものすごくシンプルに見えるが、しかしEVにありがちな「タッチパネルにすべてを集約」的なことはしていない。

かつてのヌォーバ500のダッシュパネルにトグルスイッチが横一線で並んでいたように、必要最低限の物理スイッチ類がやはり横一線で配置されているのである。

シートは丸いヘッドレストを含め既存のフィアット500のそれに似ているが、サイズ感はたっぷりとしており、掛け心地も上々。

さっそく電源を入れ、走りはじめてみた。

BEVの第一印象として多いのは「静かで力強い加速!」だが、500eは違った。

ボディがカタくて、ミシリともいわないという点が最初のうれしい驚き。

それともう1つ、床下バッテリーの重さが効いているのか、ひと回り以上大きくて上質なクルマの乗り心地が味わえる。

車重は1320kgもあるので、サイズを考えれば重量級なのだが、重みが有効に生かされている点は素晴らしい。

118psのモーターによる加速も充分で、3人乗りでも不満はなかった。

ここでも重さがデメリットになっていなかったのである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。

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