V12との惜別は強烈に アストン マーティンV12ヴァンテージへ試乗 700psと76.5kg-m

公開 : 2022.05.19 08:25

ターボ過給のV型12気筒をチューニングし、シャシーを煮詰めた最新アストン。英国編集部がその能力を評価しました。

DBS スーパーレッジェーラ由来のV12

アストン マーティンには、V12ヴァンテージという高性能スポーツカーがブランド戦略として必要だった。近年は必要性が薄れているようにも思えるが、重要なモデルであることに変わりない。

初代のV8ヴァンテージは、甘美な操縦性を備えるセンセーショナルな存在だった。2005年の3代目も、素晴らしく魅力的なモデルといえた。

アストン マーティンV12ヴァンテージ(英国仕様)
アストン マーティンV12ヴァンテージ(英国仕様)

2008年にV8エンジンが4.3Lから4.7Lへ拡大されても、驚くほど速いわけではなかった。それでも、大切なベビー・アストンだった。パワートレイン以上に優れたシャシーを備え、熱狂的なサウンドがドライバーを喜ばせてくれた。

2009年、V型12気筒エンジンを搭載したV12ヴァンテージが登場。最高出力522psを発揮し、理想といえる内容を獲得した。近年はメルセデスAMG譲りのターボチャージドV8によって、V12以上にパワフルなV8ヴァンテージも選べるようになっている。

そして2022年、最新で最後のV12ヴァンテージが姿を表した。アストン マーティンDBS スーパーレッジェーラ由来の5.2L V型12気筒ツインターボ・エンジンをフロントに搭載し、過去のどのヴァンテージよりパワフルに仕立ててある。

このパワートレイン開発で、アストン マーティンは巧みな手法を展開した。少量生産で超高級なV12スピードスターによって、必要な予算の多くが賄われたのだ。

そのため、ツインターボ・エンジンと8速トランスアクスル・オートマティックは、ほぼ仕上がった状態にあった。そこで抑えられた予算は、価格へ反映していないようではあるけれど。

シャシーは徹底的にチューニング

V12ヴァンテージは、スーパー・スポーツカーという特別なカテゴリーで見ても、他にはない訴求力を備えている。アストン マーティンでは最小モデルのボンネットに、大排気量エンジンが押し込まれている。

GT3レーシングカーと距離も近い。技術開発の成果が、レギュレーションに縛られることなく惜しみなく投入されている。

アストン マーティンV12ヴァンテージ(英国仕様)
アストン マーティンV12ヴァンテージ(英国仕様)

同社の技術者は、ヴァンテージをよりシリアスなサーキットマシンへと仕立てた。同時に、ワイルドな個性をより楽しみやすくする、懐の深さも与えている。

価格を釣り上げた要因の1つが、カーボンファイバーとコンポジット素材による、ボディパネル。クラムシェルのカーボン製ボンネットには、エアアウトレットが設けられた。フロントフェンダーの大胆な造形が、ワイド感を強調する。

シャシーは入念に補強され、サスペンションも大幅に改良を受けている。フロントのトレッドは、V8ヴァンテージから40mm拡大。スプリングレートはフロントで40%、リアで50%引き締められ、リアにはヘルパースプリングも組まれている。

アンチロールバーは、フロント側がV8ヴァンテージより硬く、リアは柔らかい。スカイフックと同社が呼ぶ、アダプティブダンパーを制御するソフトウエアも書き換えられた。パワーステアリングの特性も見直されている。

ボディが軽量化されてもV型12気筒エンジンは軽くなく、車重はV8ヴァンテージより110kg重い。しかし最高出力は700psもあるため、パワーウエイトレシオは20%高いという。0-100km/h加速は3.5秒だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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