フォーミュラEの第3世代マシンにドライバーが期待する理由 レース展開が大きく変わる?
公開 : 2022.05.12 18:25
来シーズンからフォーミュラEに導入されるGen3マシン。その変化にドライバー達は期待を寄せています。
大幅な出力向上 新たな時代へ突入
戦闘機をモチーフにしたフォーミュラEの第3世代マシン(Gen3)は、来年のシーズン9でデビューする予定だ。その新しいビジュアルについて、ドライバーの間で意見が分かれているのは当然だろう。
「リアはなかなかいい感じだね。他の部分は……まあ、慣れる必要があるかな」と、ポルシェのパスカル・ウェーレインは遠慮気味に話す。一方、チームメイトのアンドレ・ロッテラーはもう少し肯定的で、「未来のレースを象徴する、ユニークなアイデンティティを持つ印象的なデザインだ」と語っている。
見た目はさておき、最も重要な要素について、2人の意見は一致している。元F1ドライバーのウェーレインは、「重要なのは、パフォーマンスとコース上でのフィーリングだ。データを見る限りでは、かなり期待できそうだ。パワーもあるし、車体が軽いから運転しやすく、俊敏性もある」
フォーミュラEシーズン9には、自動車メーカーとしてDS、ジャガー、マヒンドラ、マセラティ、ニオ、日産、ポルシェの7社が参戦を表明している。その他、1年ぶりに復帰するドイツのアプトを含め、計12チームが参戦予定だ。パワートレインの供給元はまだ明らかにされていない。
シリーズの共同創設者であるアレハンドロ・アガグが「フォーミュラEの第3の時代」と表現するように、今回のマシンはパフォーマンスが大幅に向上している。Gen2の最大出力250kW(340ps)から、Gen3は2つのパワートレインから合計600kW(816ps)を発生するのだ。
フロントアクスルに250kWモーター、リアに350kW(475ps)モーターが搭載され、最高速度は320km/hに達すると予測されている。フォーミュラEの市街地コースはタイトなものが多いので、どこでそれを発揮できるかはわからないが。
小型・軽量ボディがレースに与える影響
Gen3は、バッテリーの小型化とリアブレーキの廃止により、車体寸法がコンパクトになり、重量も60kg軽くなっている。バッテリーの小型化は、フロントアクスルからの回生電力を初めて導入するなどして、45分間のレースで必要な電力の40%をまかなえるようにしたことによるものである。
ル・マンで3度の優勝経験を持つロッテラーは、「世界で最も効率的なレーシングカーであり、史上初のネット・ゼロ車であり、すべてが正しい方向に進んでいる」とフォーミュラEを熱烈に支持し、「Gen1からGen2への移行よりも大きい、これまでで最大の進化だ」と語る。
リアブレーキがないというのは少々退屈に聞こえるが、ドライバーに言わせれば逆である。「Gen2でも、回生とモーターでかなりブレーキがかかっているんだ」とウェーレインは言う。「ハンドブレーキのようなものだと考えてほしい。今はリアでエネルギーを回収し、リアで走っている。来年はフロントでもエネルギーを回生できるから、プッシュラップでは通常のレーシングカーと同じように感じられるだろうね」
「ディスクブレーキの場合、温度やブレーキ部品の品質に左右されるから、必ずしもコントローラブルなものではない。MGUでブレーキをプログラムすれば、マシンをより正確に走らせることができる。これを完璧に、正しくセットすることはエンジニアにとって大変な仕事だけど、我々ドライバーにとっても、正しいフィードバックを与えて、できるだけ早くチームを最良の方向に導くことが重要なんだ」
ポルシェのドライバーたちは、Gen3によりレースの「見応え」がどのように増すのか、関心を寄せている。モナコでは、フォーミュラEはすでにF1よりも多くのオーバーテイクを演出している。
「マシンは少しコンパクトになったけど、それほど大きな差ではないと思う」と、ロッテラーはレースへの期待を語る。「それ以上にマシンの俊敏性によって、より多くのリスクとオーバーテイクの機会が与えられると思う」