大胆ボディのイタリアン フィアット・クーペ(クーペフィアット) 英国版中古車ガイド
公開 : 2022.05.23 08:25
1990年代のフィアットを象徴する1台といえた、クーペ。個性的なスタイリングと走りは、今も魅力的だと英国編集部は評します。
もくじ
ークリス・バングル氏による個性的なカタチ
ーインテリアはピニンファリーナ社
ー1番人気はパワフルな20バルブ・ターボ
ー新車時代のAUTOCARの評価は
ー購入時に気をつけたいポイント
ーオーナーの意見を聞いてみる
ー知っておくべきこと
ー英国ではいくら払うべき?
クリス・バングル氏による個性的なカタチ
約30年前に登場したフィアット・クーペ(クーペフィアット)は、鮮烈だった。今でも忘れられない、という人がいるかも知れない。そういえば、と思い出す読者もいらっしゃるだろう。
だが、まだ過去の記憶にするのはもったいない。大胆なデザインのイタリアン・クーペは、比較的手頃な価格で流通している。台数は、かなり限られているけれど。
クーペフィアットのスタイリングは、今も昔も個性的。好き嫌いは分かれるかもしれないが、目を引くことは間違いない。イタリアの豊かな芸術文化が、フィアット最高といえる小柄なクーペにも落とし込まれている。
まるで、走る現代彫刻作品のよう。そんなイタリアン・エキゾチックを我がものとするには、大きな経済力が求められるのが通例だが、フィアットだからそんな心配はいらない。
このボディをデザインしたのは、アメリカ人デザイナーのクリス・バングル氏。フィアットのデザイン部門、チェントロ・スティーレに在籍していた時代の作品だった。
どこか不釣り合いにも見えるが、紛れもなく美しく、心が奪われてしまう。ホイールアーチを斜めに走る鋭いラインが、そんな印象を強めている。
フィアットは当初、20世紀前半に活躍した芸術家のルーチョ・フォンタナ氏の作品から影響を受けたと説明していが、バングル自身はそれを否定している。その人物すら、知らなかったそうだ。
インテリアはピニンファリーナ社
全体的なプロポーションや、勢いよく切り落とされたテール周りの処理などには、ザガート社のスタイリングに通じる雰囲気もある。好き嫌いが分かれそうな、ひと癖ある仕上がりも。
柔らかく膨らんだヘッドライト・カバーに、クラムシェルのボンネット、丸いテールライトなど、ディティールも面白い。ドアハンドルはピラーに隠され、燃料キャップは古いスポーツカーから持ってきた部品にも見えるというコダワリぶりだった。
ピニンファリーナ社が手掛けたインテリアも同様。ボディと同色に塗られた金属パネルが、ダッシュボードやドアパネルにあしらわれていた。クルマ好きを喜ばせるデザインが、あちこちに散りばめられていた。
さらに、車内には子供が座れる+2のリアシートを完備する。実用性も低くはない。
一方で、見た目から抱く期待を少し裏切ったのが、平凡なメカニズム。当時のコンパクト・ハッチバック、フィアット・ティーポのコンポーネントが流用されていた。とはいえ、パワーは充分だったけれど。
クーペフィアットの登場は1993年。当初は2.0L 16バルブ4気筒エンジンで、英国には最高出力139psの自然吸気と、189psのターボが導入された。トランスミッションは5速マニュアル。前輪駆動は共通で、ターボにはリミテッドスリップ・デフが組まれていた。