大胆ボディのイタリアン フィアット・クーペ(クーペフィアット) 英国版中古車ガイド

公開 : 2022.05.23 08:25

1990年代のフィアットを象徴する1台といえた、クーペ。個性的なスタイリングと走りは、今も魅力的だと英国編集部は評します。

クリス・バングル氏による個性的なカタチ

約30年前に登場したフィアット・クーペ(クーペフィアット)は、鮮烈だった。今でも忘れられない、という人がいるかも知れない。そういえば、と思い出す読者もいらっしゃるだろう。

だが、まだ過去の記憶にするのはもったいない。大胆なデザインのイタリアン・クーペは、比較的手頃な価格で流通している。台数は、かなり限られているけれど。

フィアット・クーペ(クーペフィアット/1993〜2000年/英国仕様)
フィアット・クーペ(クーペフィアット/1993〜2000年/英国仕様)

クーペフィアットのスタイリングは、今も昔も個性的。好き嫌いは分かれるかもしれないが、目を引くことは間違いない。イタリアの豊かな芸術文化が、フィアット最高といえる小柄なクーペにも落とし込まれている。

まるで、走る現代彫刻作品のよう。そんなイタリアン・エキゾチックを我がものとするには、大きな経済力が求められるのが通例だが、フィアットだからそんな心配はいらない。

このボディをデザインしたのは、アメリカ人デザイナーのクリス・バングル氏。フィアットのデザイン部門、チェントロ・スティーレに在籍していた時代の作品だった。

どこか不釣り合いにも見えるが、紛れもなく美しく、心が奪われてしまう。ホイールアーチを斜めに走る鋭いラインが、そんな印象を強めている。

フィアットは当初、20世紀前半に活躍した芸術家のルーチョ・フォンタナ氏の作品から影響を受けたと説明していが、バングル自身はそれを否定している。その人物すら、知らなかったそうだ。

インテリアはピニンファリーナ社

全体的なプロポーションや、勢いよく切り落とされたテール周りの処理などには、ザガート社のスタイリングに通じる雰囲気もある。好き嫌いが分かれそうな、ひと癖ある仕上がりも。

柔らかく膨らんだヘッドライト・カバーに、クラムシェルのボンネット、丸いテールライトなど、ディティールも面白い。ドアハンドルはピラーに隠され、燃料キャップは古いスポーツカーから持ってきた部品にも見えるというコダワリぶりだった。

フィアット・クーペ(クーペフィアット/1993〜2000年/英国仕様)
フィアット・クーペ(クーペフィアット/1993〜2000年/英国仕様)

ピニンファリーナ社が手掛けたインテリアも同様。ボディと同色に塗られた金属パネルが、ダッシュボードやドアパネルにあしらわれていた。クルマ好きを喜ばせるデザインが、あちこちに散りばめられていた。

さらに、車内には子供が座れる+2のリアシートを完備する。実用性も低くはない。

一方で、見た目から抱く期待を少し裏切ったのが、平凡なメカニズム。当時のコンパクト・ハッチバック、フィアット・ティーポのコンポーネントが流用されていた。とはいえ、パワーは充分だったけれど。

クーペフィアットの登場は1993年。当初は2.0L 16バルブ4気筒エンジンで、英国には最高出力139psの自然吸気と、189psのターボが導入された。トランスミッションは5速マニュアル。前輪駆動は共通で、ターボにはリミテッドスリップ・デフが組まれていた。

記事に関わった人々

  • マーク・ピアソン

    Mark Pearson

    英国編集部ライター
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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