【詳細データテスト】トヨタ・アイゴX 1クラス上のシャシーと洗練度 エンジンは非力 価格は高すぎ

公開 : 2022.05.21 20:25  更新 : 2022.06.21 04:52

欧州トヨタの最小モデル、アイゴの3代目は、クロスオーバー風に生まれ変わりました。TNGAを得てシャシー性能と快適性は大幅に高まりました。しかし、キャリーオーバーのエンジンはあまりに非力。しかも価格は高過ぎます。

はじめに

コンパクトカーのマーケットは、もはやシティカー全盛の時代ではない。いまやクロスオーバーの天下だ。そんな中にあって、トヨタ・アイゴXはシティカークラスへ新たに参入するレアな存在といえる。

シティカー、自動車業界的にはAセグメントと分類されるコンパクトカーは、なかなかにタフなビジネスだと言われ続けてきた。これからもそうだろう。このもっとも小さいセグメントの購買層は価格の低さを期待するが、メーカーとしてはNCAPテストで手を抜けないし、コスト的にハイブリッドシステムなしでエミッション規制をクリアしなくてはならないのだから。

テスト車:トヨタ・アイゴXリミテッドエディション
テスト車:トヨタ・アイゴXリミテッドエディション    MAX EDLESTON

それゆえ、シトロエンプジョーが撤退したのも無理はない話だ。彼らはC1と108を生産していたチェコのコリーン工場の権利を手放した。そう、トヨタとの合弁で設立したTPCAの生産拠点で、アイゴの故郷でもある。

フランス勢が手を引いたことで、旧TPCAはトヨタ100%出資となった。現在はTMMCZと名を変え、アイゴXとヤリスを製造している。どうやらトヨタは、いまだAセグメントに将来性があると踏んでいるようだ。

さて、トヨタの欧州におけるボトムエンドを支えてきたアイゴは今年、3世代目へとバトンタッチした。ただし、Xと書いてクロスと読むサフィックスを与えられて。

そのアイゴX、ボディサイズも地上高もわずかながら増加し、いささかの成熟も果たすとともに、価格がかなり上昇した。結局、この手のクルマを存続させるには、値上げするほかに方法がなかったというわけだ。

いや、はたしてそうだろうか。このセグメントの現行モデルを思い浮かべてみたならば、トヨタの価格設定で、満足のいくシェアを奪えるとはとても思えない。もはや型は古くなったものの、フォルクスワーゲンUpも、フィアット500のガソリン車も現役だ。販売台数は伸びていないが、パンダもまだ新車で買える。

もっとチープでよければ、欧州市場にはキアヒョンデが参入している。ピカントやi10は、Upやフィアット勢よりは新しいモデルだ。また、ダチア・サンデロなら、もう少し大柄なのに驚くほどコスパがいい。

SUV風のAセグメント、というのも独自性を訴求できる要素ではない。その分野ではスズキが2016年にイグニスを投入し、先行しているからだ。

かつてのAセグメント市場に比べれば、競合モデルは少なくなった。それでもアイゴXが成功するためには、その強気な価格設定に見合う実力の持ち主であることを証明してみせなくてはならない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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