英国最古の老舗メーカー、モーガン 生産台数「倍増」目指す 若者を取り込む新事業戦略とは

公開 : 2022.05.27 06:05

クラシカルなモデルで知られるモーガンは、経営体制を一新し、電動化時代に向け新たな一歩を踏み出しています。

伝統的な自動車メーカーに「転機」

モーガンの新CEOであるマッシモ・フマローラ氏は以前、ランボルギーニでスペシャル・プロジェクトの責任者を務めていた。英国企業のトップに移って数週間、ロンドンにある旗艦店舗でAUTOCARの独占インタビューに応えてくれた。そこで彼が語ったのは、モーガンの今後の方向性についてだった。

フマローラが最も重視するのは、モーガンの真正性を「確実に」維持し、そのユニークな価値と特性を増幅させることである。モーガンの精神もまた、より広い範囲に浸透させる必要がある、と彼は言う。次に優先すべきは、会社が成長するためのあらゆる機会を見つけ、生み出すことだ。「これまでの遺産は保険ではありません。将来のために良い計画を立てなければなりません」

モーガンは経営体制を改め、伝統の維持と事業拡大に動き出した。
モーガンは経営体制を改め、伝統の維持と事業拡大に動き出した。

モーガンは現在、年間約800台を生産しており、人気モデルの3ホイーラーが販売終了した昨年も、680台という輝かしいセールスを記録した。その70%は海外に輸出され、70の市場に流通する。その中でもフランス、ドイツ、米国が最大の市場である。

5年後には年間1500台規模への成長を目指しており、フォード製エンジンを搭載した新型モーガン・スーパー3(3ホイーラーの後継)の登場も、事業拡大のための布石だと捉えている。

三輪車のスーパー3は、四輪車よりも各市場の規制に適合しやすいため、特に米国での成功のチャンスを秘めている。モーガンのベストセラーになるのも、そう遠くないだろう。

このように生産台数が現在の倍近くに膨れ上がる可能性があるため、工場と人員の大幅な増強が必要となる(新しい塗装工場がまもなく稼働開始予定)。そして何より、モーガンの経営陣交代もその大きな理由の1つである。

冒険的なライフスタイルブランドへ

モーガンを所有するイタリアのプライベート・エクイティ企業インベスト・インダストリアル社は先月、これまで同社の「生え抜き」であるスティーブ・モリス氏が務めてきた会長兼CEOの役割を分割すると発表した。モリスは会長の座につき、新たにフマローラ氏がCEOとして経営責任を負うことになったのだ。

金属加工の見習いとして英ウスターシャー州の工場でキャリアをスタートしたモリスは、これまで会社の経営にあらゆるレベルで深く関わってきた。車種が増え、投資額が増加し、設備と人員の充実、そして電動化が進むにつれて、戦略的な思考が必要になってきたとモリスは言う。

新型モーガン・スーパー3は、同社の主力モデルとして大きな期待を背負っている。
新型モーガン・スーパー3は、同社の主力モデルとして大きな期待を背負っている。

フマローラはエンジニア出身で、大手OEMや少量生産の高級車メーカーで30年のキャリアを持ち、自身の強みとして「国際的な経験」と「世界市場に対する理解」を挙げている。フィアット、FCA、アウディフェラーリ、ランボルギーニなどではマーケティング業務に携わることが多かったという彼は、次のように語っている。

「当社の製品は、若い世代を惹きつけることができると確信しています。伝統もいいですが、もっと冒険的なライフスタイルのブランドにする機会もある。オーナーが自らそう言ってくれているのです」

いずれにせよ、新CEOの就任で、モーガンの戦略が改めて検討されることは明らかだ。まだ結論は出ていないが、少なくとも「複数の重要課題」が議論の焦点になるだろうというのが、2人の意見だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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