最後まで新しかった BMW i3へ再試乗 純EV「i」ブランドの開拓者 7月で生産終了

公開 : 2022.06.02 08:25

BMWの純EVブランドの皮切りとなり、現在も優れた訴求力を持つi3。生産終了を控え、英国編集部が再試乗しました。

明快なアイデアが貫かれたi3

遡ること2013年、BMWは自社初となる量産の電気自動車、i3を発売した。世界はCOVID-19の驚異を知らず、ティックトックに若者がハマる3年も前だった。

ここ数年は変動が大きく、遥か昔のように思えてしまう。一般的に自動車で9年といえば、モデルチェンジを経ていることが多い。だが、i3は今も現役。しっかり改良を受けているけれど。

BMW i3(英国仕様)
BMW i3(英国仕様)

今回は、そんなBMW i3を振り返ってみたい。理由は、2022年7月に生産を終えるから。定期的にAUTOCARをお読みいただいている方なら、「50年後に価値上昇のモデル」の1台として、i3が選出されたことをご記憶かもしれない。

i3の登場前でも、純EVは何台か選べた。だがこのクルマは、次の時代を定義するような新しい存在に感じられた。それは2022年でも変わらない。明快なアイデアが貫かれているからだろう。

BMWがメガシティ・ヴィークルというコンセプトカーを発表したのは、2010年。アルミニウム製のシャシーに、カーボンファイバー強化プラスチック(CFRP)製の乗員空間セルを載せた強固な構造を採用し、ボディ中央にBピラーを必要としていなかった。

3年後の量産版は、その概要をしっかり備えていた。リサイクル素材を多用し持続可能性に配慮され、ボディサイドには大きな開口部が与えられていた。観音開きのドアが特徴だった。

カーボン製のセルのおかげで、i3はこのクラスの純EVとしてはかなり軽い。容量の大きい駆動用バッテリーを積んだ後期型でも、1290kgに仕上がっている。同等のボディサイズを持つ当時のルノー・ゾエは、1465kgあった。

BMW自ら開発した183psの駆動用モーター

発表時のi3は、2種類のパワートレインから選択できた。1つは完全な純EV。170psの駆動用モーターを搭載し、128kmから160kmの航続距離が主張された。

もう1つが、レンジエクステンダーという発電用エンジンを追加したもの。647ccの2気筒ガソリンエンジンは、本来バイク用のものだった。

BMW i3(英国仕様)
BMW i3(英国仕様)

このパワートレインで特筆すべき点が、トルク曲線に留意した駆動用モーターをBMW自ら開発したこと。高回転域を得意とする性質は、内燃エンジンの開発を起源とするミュンヘンの企業らしい。

最新のi3を走らせてみると、とても活発に感じられる。静止状態から50km/hくらいまでが特に小気味いい。それでいて、速度が上昇しても勢いは衰えにくい。ポルシェタイカンのように、余力のある加速が長く続く。

9年前の技術がベースのクルマとは信じがたいほど。最新版では駆動用モーターは183psになり、駆動用バッテリーもアップデートされ、航続距離は281kmまで延びている。

全高の高いプロポーションの通り、着座位置は高め。それでも、正確に反応するステアリングと、後輪駆動の特性が融合し、身のこなしに締りがあり機敏。ドライビング体験は素晴らしい。軽さがクルマへ与えるメリットを、体現している。

事実、BMWは可能な限り車重を抑える工夫をしており、ドアに用いられるボルト類までアルミ製。ワイパーはハニカム構造が取られている。細部に至るまで、一貫したコンセプトを感じる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ピアス・ワード

    Piers Ward

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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