クラシックカー価格急落? 海外で起きている「異変」のワケ 若い世代の興味はどこへ

公開 : 2022.06.04 17:45

クラシックカーの人気が高い英国で、ジャガーEタイプのような名車の価格が下がり続けています。その理由とは。

人気低迷のクラシックカー

以前はクラシックカー界のスターと見なされていたジャガーEタイプだが、故郷の英国では徐々に人気が落ちてきている。コレクターが1990年代の比較的若いクルマに乗り換えているためだ。

クラシックカー向けの自動車保険を展開する保険会社ハガティ(Hagerty)によると、EタイプS1 3.8の平均価格は、過去2年間で8万9575ポンド(約1450万円)から7万2250ポンド(約1170万円)に下がったという。同年代のもう1つの名車、アストン マーティンDB6ではさらに下落が激しく、34万4000ポンド(約5585万円)から19万500ポンド(約3090万円)に下がっている。

名の知れたクラシックカーも、その価値は不変ではない。今注目を集め始めているのは、1990年代のクルマのようだ。
名の知れたクラシックカーも、その価値は不変ではない。今注目を集め始めているのは、1990年代のクルマのようだ。

伝統ある5台のクラシックカーの英国価格は、平均13%下落している。

こうした価格の落ち込みについて、ハガティUKプライスガイドの編集者であるジョン・メイヘッド氏は、次のように述べている。

「EタイプやDBのようなコレクターズカーは、価格が下落するか低迷しています。以前から購入したいと思っていた人たちが、おそらく最も高い価格で買っていった一方で、買いたいけどまだその余裕がないという人もいるのです」

「DB6とその前身であるDB4については、『DB5でないこと』が問題なのです。DB5は、ジェームズ・ボンドに最も関わりが深く、人々が一番欲しがっているモデルです」

目の肥えた消費者たち

自動車販売店クラシック・モーター・ハブのリチャード・ライトソン氏は、クラシックカーの中で厳しい価格下落に見舞われているのは「完璧でないモデル」だと語った。

「例えば、左ハンドルから右ハンドルに改造されたEタイプなどに誰もが飛びつき、高値をつけ、ただ痛い目を見ただけの5年前に比べれば、消費者の目はずっと肥えています。今は、欲しいクルマを待つ忍耐があるのです。どんな値段でも、急いで買おうという衝動がなくなったんですよ」

この2年で、一部のクラシックカーの価格は明らかに下がっている。(グラフの価格単位は千ポンド)
この2年で、一部のクラシックカーの価格は明らかに下がっている。(グラフの価格単位は千ポンド)    ハガティUK

「わたしだって、修理が必要な安いクルマより、最高のコンディションのEタイプを20万ポンド(約3250万円)で買えるまで待ちたいですし、多くの人がそう思うようになっています。最近、30万ポンド(約4870万円)のEタイプを売りましたが、10万ポンド(約1600万円)のものはなかなか興味を示してもらえません」

かつての競技用車両、特にサーキット走行歴のあるクルマを除いて、フォーマルなセダンや運転が難しいクルマ、刺激のないクルマなど、戦前・戦後のクラシックカーの価格も下がっている。

これは、伝統的なクラシックカー市場の核心に迫る問題だとメイヘッドは言う。

「この種のクルマに感情的なつながりを持ち、興味を抱き続けていた人たちは、はっきり言ってもういません。新しい世代の消費者は、クラシックカーをそれほど高く評価していないのです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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