ベスト・ホットハッチの1台 フォード・フィエスタ ST 5ドアへ試乗 GRヤリスに迫る興奮
公開 : 2022.06.14 08:25
英国フォードが誇るホットハッチ、フィエスタ ST。フェイスリフトを受けた最新版を、英国編集部が評価しました。
5ドアのみになったフィエスタ ST
小さなフォードには特別な思い入れがある、という英国人は少なくない。2021年の末にはフォードのファンクラブによって、記念すべきモデルの誕生40年がお祝いされている。フィエスタ XR2だ。
それとほぼ同じタイミングで、英国フォードは最新版のフィエスタ STを発表した。純EVのSUVになったマスタングや、クーペではなくなったプーマに対して、あまり好感を抱いていない古くからのファン層へアピールするように。
7代目となるフィエスタだが、フェイスリフトとしてフロント側はより挑戦的な顔つきになり、運転支援システムもアップデートされている。メーターパネルはモニター式へ更新され、従来との差別化が図られている。
写真のように、ミーン・グリーンと呼ばれる鮮やかなメタリックカラーも、オプションで用意された。だが、失ったものもある。純EVへのシフトと、それに伴うラインナップの合理化を進める一環として、3ドア・ボディが選べなくなっている。
2022年仕様のフィエスタ STで選べるのは、5ドアのみ。実用性は増しているが、ホットハッチとしての魅力が残されているのか、疑問もなくはない。だが、心配はご無用だ。
モデル中期のフェイスリフトの内容は、全般的に控えめ。ドライビング体験にも大きな変化は及んでいない。相変わらず、10万ポンド(約1630万円)以下の価格帯のモデルとして、最もドライバーを満たしてくれる1台に数えることができる。
馬力以上の鮮烈さを楽しめる
ザラツイたノイズを放つ3気筒ターボエンジンには僅かに手が加えられ、若干最大トルクが増えたが、それ以外は従来どおり。やる気を感じさせるスポーツエグゾーストからは勇ましい排気音が放たれ、馬力以上の鮮烈さを楽しめることに変わりはない。
日常的な利用シーンでは、右足を丁寧に動かすことで、1.0Lエンジンを積んだベーシックなフィエスタと同じように運転できる。3気筒エンジンは、アイドリング時やハーフスロットル時ならとても朗らか。
ブレーキは良く効くものの、扱いにくさはない。市街地の速度域でも、運転しにくいと感じることはないだろう。
小さなハッチバックらしく、フィエスタ STは近所のスーパーマーケットへのお買い物に使える。同時に、まっとうなスポーツカーとして楽しむこともできる。この振り幅の広さが、明確な強みといえる。
ただし、傷んだ路面は避けたいところ。コーナーを攻め込むことが前提の引き締められたサスペンションは、舗装の剥がれた穴などの処理があまり得意ではない。
郊外の開けた道へ足を伸ばせば、小気味いい3気筒ターボの本領を発揮できる。6速MTは、3速に入れたままでOK。いつでも不満ないパワーを引き出せる。マツダMX-5(ロードスター)に並ぶ速度域で、エンジンを使い切れる。