クルマ好きに応えるマニュアル トヨタ・スープラ 3.0 6速MTへ英国試乗 相性は◎

公開 : 2022.06.19 08:25

希少車種といえるFRスポーツのスープラに、6速MTが登場。英国編集部はモデルの魅力を高めるアップデートだと評価します。

クルマ好きの最大の理解者かもしれない

2022年のニューモデルで、最高のスポーツカーに位置づけられるであろう、トヨタGR86。だが同社はもう1台、3ペダル+マニュアル・トランスミッションの貴重なモデルをラインナップした。スープラだ。

トヨタといえばプリウスやミニバンなど、われわれに身近なモデルを大量に販売する、世界最大手の自動車メーカー。それだけではなく、近年はクルマ好きの気持ちに応えてくれる、最大の理解者といえるのかもしれない。

トヨタ・スープラ 3.0 MT(欧州仕様)
トヨタ・スープラ 3.0 MT(欧州仕様)

このモデル展開を推進する張本人こそ、トヨタを率いるCEO、豊田章男氏。根っからのクルマ好で、自らモータースポーツを楽しむ彼がいなければ、ガズーレーシング(GR)というイメージを牽引するサブブランドも存在しなかっただろう。

結果としてトヨタGRヤリスと、GR86という見事な傑作が誕生した。そして、この6速MTを搭載したスープラも。先の2台と比べると、パワフルでグランドツアラー寄りではある。だがしっかり、カー・エンスージァストに寄り添っている。

英国導入も決まったMTのスープラだが、同時に新しい3色のボディーカラーも選べる様になっている。さらに、ZF社製8速ATを搭載する既存のスープラへ施されたものと同等の、ステアリングとサスペンションへのアップデートも受けている。

変化は限定的ながらシャシーもアップデート

シャシーのチューニングは細部にまで及んでおり、アンチロールバーやダンパーのラバーブッシュにも改良が施された。高剛性のものを装着することで、姿勢制御の精度を高めている。

電動パワーステアリングも、より自然な重み付けが早い段階で得られるよう、手が加えられた。若干クイック過ぎるように感じられたレシオ自体に、変更はないそうだ。

トヨタ・スープラ 3.0 MT(欧州仕様)
トヨタ・スープラ 3.0 MT(欧州仕様)

いずれも歓迎できる内容といえる。スープラは登場時から不足ないスピードで長距離をこなせる、素晴らしいグランドツアラーだった。反面、ポルシェ718ケイマンのような、ダイナミックさは若干欠けていた。それが改められたのだから。

といっても、変化は小さい。今回の試乗はスペイン南部、モンテブランコ・サーキットが舞台となったのだが、用意された3周という時間では明確な違いを感取できなかった。

サーキットでのスープラは適度にタイトで、一体感があり、間違いなく速い。だが以前と同様に、速度域の低いコーナーで若干鼻先が重く感じられたことも事実だ。

フロントタイヤがどんな状態にあるのか、直感的なフィーリングも薄い。ひと回り小さいGR86なら、濃密な感触が伝わってくるのだけれど。718ケイマンでも。

表現が難しいのだが、フロントアクスルがドライバーから遠く、トレッドも狭く感じられる。最高のスポーツカー、と表現できるまでには少し届いていない。

とはいえ、50.9kg-mという潤沢な最大トルクを活用し、リアタイヤをゆっくり外へスライドさせることは容易。自在にラインを調整できる楽しさはある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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