払い下げパトカーがお買い得? 海外で中古の警察車両が売れているワケ

公開 : 2022.06.14 19:25

日本では警察車両の払い下げは行われていませんが、英国ではお買い得な中古車として一定の人気を得ています。

使い倒された中古パトカー 人気の理由を探る

テレビ番組や車載カメラのおかげで、パトカーのカーチェイスを見たことがある人は多いだろう。火花を散らしながら容疑者を追跡し、時には身体を張って相手の車両をひっくり返すというアクション映画のような映像もある。そのような派手な光景を目の当たりにしながら、中古のパトカーを購入したがる人がいる。

英国のバーミンガム近郊、ブライアリーヒルにある中古車販売店「エクス・ポリスカー・センター(Ex-Police Car Centre)」では、月に約30台の「元警察車両」が売れているという。もちろん客は一般人で、使い古されたパトカーを喜んで買っていく。経営者のニコラ・フィニー氏は、この種の販売店としては英国最大規模だと話す。

英国警察の払い下げパトカーでは、品質と信頼性においてBMWがベストバイだという。
英国警察の払い下げパトカーでは、品質と信頼性においてBMWがベストバイだという。

「わたし達は1976年以来、警察車両の中古車を販売してきました。質の悪い中古車がたくさん出回っている中で、信頼できる元オーナーと整備履歴のあるクルマを買わない理由はありません」

ワンオーナーとはいえ、ドライバーは複数いる。しかも、全員がのんびりとクルージングを楽しんでいるわけではない。ロンドン警視庁は、2018年から2019年の1年間で、105台の車両が破壊または65万6000ポンド(約1億円)で償却されたことを明らかにした。その中には、1438件の車両追跡のうち27件の「戦術的接触」が含まれているはずだ。

走行距離や損傷具合…… 気になる使用状況は

フィニーは、「市街地を走る警察車両は、厳しい使用環境を強いられている」と認めつつ、「デヴォンやコーンウォールのような地方の警察署で使われていたものは最高です」と語る。

「走行距離が長くても、状態はいいんです」――ここで彼女が言う「走行距離が長い」というのは、20万~30万kmのこと。しかも、ほとんどの場合4年という短い期間で、だ。

中古車の状態は良好で、価格も高くない。ただし、年式の割に走行距離は多い。
中古車の状態は良好で、価格も高くない。ただし、年式の割に走行距離は多い。

それでも、警察は保有する車両に保険を掛けているので、損傷があまりにひどい車両を一般に売ることは許さないだろう。ウェスト・ミッドランド警察の車両管理者であるゲイリー・マレット氏によれば、損傷した車両は第三者のエンジニアによって状態を評価され、保険会社が使用するのと同じ4つの評価区分のうちの1つが与えられるという。

そして、車両を回収業者に売却し、あとは業者が評価区分に応じてスクラップにするか、修理するか、公売に出すかが決定されるのだ。構造的な損傷を受けた車両は、警察用の装備を外した上でスクラップとなる。マレットは装備について次のように述べている。

「パトカーの装備には3500ポンド(約57万円)かかるので、可能な限り装備品を再利用しています。ドアやパネルも再利用しますよ」

構造的な損傷はないものの、道路に戻せないほど消耗している場合は、回収業者に売却し、機械部品を取り外して販売する。軽度の損傷しかないものは、警察が認可した工場で修理された後、公売に出される。同様に、エクス・ポリスカー・センターが販売するような無損傷の車両も、公売で処分されたものだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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