予告なく打ち切り 英政府 EV購入補助金、即時廃止を発表 販売への影響は

公開 : 2022.06.15 06:45

英国政府は14日、EVやPHEVに対する1500ポンド(約25万円)の購入補助金を即時廃止すると発表。11年にわたって続いたEVへの移行促進政策は、予告なく終了しました。

英国は「EV革命」に成功 販売に影響は?

英国政府は6月14日、電気自動車(EV)やプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)に対する購入補助金制度を、予告なしに廃止した。2011年から電動モデルの奨励のために施行されてきた1500ポンド(約25万円)のプラグインカー補助金(PiCG)は、突如として終わりを告げた。

政府はこの決定の理由を「英国のEV革命の成功」としており、2011年に1000台程度だったEVの国内販売台数を、2022年の最初の5か月間だけで10万台近くにまで押し上げることに貢献したという。PiCGは発足以来、50万台以上の電動モデルに適用され、その合計額は14億ポンド(約2280億円)以上にものぼる。

マツダMX-30やミニ・エレクトリックなど、車両価格3万2000ポンド(約520万円)以下のEV/PHEVが補助金の対象となっていた。その対象車種は24台だったという。
マツダMX-30ミニ・エレクトリックなど、車両価格3万2000ポンド(約520万円)以下のEV/PHEVが補助金の対象となっていた。その対象車種は24台だったという。

英国では、これまでPiCGの支給額が何度も削減されてきたため、数年前から廃止が噂されていた。政府は以前、2022/2023年度会計までの支給を表明しており、タイムリミットが近いことは示されていた。

半年前、支給額は2500ポンド(約40万円)から1500ポンドに削減され、対象となる車種の価格上限も、3万5000ポンド(約570万円)から3万2000ポンド(約520万円)に引き下げられたばかり。政府によると、PiCGの対象車種は、自動車メーカーが安価なエントリーモデルを多く投入するようになったため、昨年の15台から24台に増えているという。

英国政府は、次のような声明を発表している。

「政府は、プラグインカー補助金が一時的なものであることを常に明言しており、以前にも2022-23年までの支給を明らかにした。補助金の規模や対象車種の削減が続いたが、急速に加速する販売や、市販モデルの継続的な増加にはほとんど影響がなかった」

「このため、政府は現在、公共充電設備や、EVへの切り替えに必要な他の車両の購入支援など、EVへの移行を阻む主な障壁に対し資金を再注力している」

新分野への投資を強化 EV自動車税は引き続き0%

政府は、PiCGの代わりに、プラグインのタクシーやオートバイ、バン、トラック、車椅子対応車(福祉車両)への補助金として3億ポンド(約490億円)を投じると発表した。また、こうした「焦点の転換」によって、英国のEV充電インフラへの投資を強化できるとしている。

EVは従来の内燃機関自動車に比べてランニングコストが下がるため、1500ポンドの補助金のメリットを「上回ることが多い」と主張し、EVの自動車税(VED)は引き続きゼロで、社用車減税の恩恵も受けられるとしている。

英国政府は購入補助金を打ち切るが、国内の公共充電設備を2030年までに10倍に拡大するなど、他分野への投資を継続する。
英国政府は購入補助金を打ち切るが、国内の公共充電設備を2030年までに10倍に拡大するなど、他分野への投資を継続する。

トルーディ・ハリソン運輸大臣は、次のように述べた。

「政府は、2020年以降25億ポンド(約4080億円)を投入し、EVへの移行に記録的な額の投資を続けてきました。さらに、主要国の中で最も意欲的なディーゼルおよびガソリンの新車販売終了時期を設定しています。しかし、そのサクセスストーリーを継続させるためには、政府の資金は常に最もインパクトのあるところに投資されなければなりません」

「EV市場の活性化に成功した今、今度はプラグインカー補助金を使って、タクシーから商用バンまで、ゼロ・エミッションへの移行をより安く、簡単にできるようにしたいと考えています」

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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