クラシック・ミニを電動化 エレクトロジェニック・ミニへ試乗 楽しい個性はキープ 前編

公開 : 2022.07.05 08:25

英国の技術企業が、テスラの駆動用バッテリーでBMCミニをBEV化。想像以上にミニらしい走りを、英国編集部は評価します。

Aシリーズ・エンジンを電気モーターに置換

近年の欧州では、クラシックカーをバッテリーEV(BEV)に変換(エレクトロモッド)する事例が増えている。その理由は、重いクラッチペダルや面倒なキャブレター、トランスミッションを変速するという手間から開放され、乗りやすくなるからのようだ。

だが、ポルシェフェラーリなど、内燃エンジンが大きな魅力を構成しているモデルの場合は、クルマとしての魅力を奪っているようにも思える。今後、自然吸気の水平対向6気筒やV型12気筒が量産車に採用される可能性は、極めて低い。

エレクトロジェニック・ミニ・クーパー(英国仕様)
エレクトロジェニック・ミニ・クーパー(英国仕様)

市街地を元気に走る美しい姿を目にできるという点では、筆者も賛同できなくはないけれど。読者はどうお感じだろう。

反面、エンジンが主役ではなかったクラシックカーの場合は、少し話が違う。エレクトロモッドのベースとして、悪くない候補になり得る。シトロエンDSなどは近未来的なスタイリングと相まって、電気モーターが似合いそうに思える。

英国では、オースチンが開発したAシリーズと呼ばれる直列4気筒エンジンが、多くの量産モデルへ搭載されてきた。チューニング次第で大幅に能力を高めることも可能で、クルマ好きに愛されたユニットでもある。だが、基本的には実務的な機械でもあった。

そんなAシリーズを搭載していたモデルの1つが、BMCミニ。今回試乗したのは、英国のエレクトロジェニック社が1994年式のミニから内燃エンジンを降ろし、BEVへ生まれ変わらせ1台だ。

車両代抜きの改造費は約534万円から

AUTOCARを定期的にお読みいただいている方なら、同社が手掛けたポルシェ356をご記憶かもしれない。このクルマにも、それに近い技術が施されている。

初めに触れておくと、エレクトロジェニック・ミニは量産車ではない。基本的にオーダーメイドに近く、ミニやポルシェに限らず、名前を聞いたことのない様なクラシックカーでも、充分な予算を用意すればエレクトロモッドしてくれる。

エレクトロジェニック・ミニ・クーパー(英国仕様)
エレクトロジェニック・ミニ・クーパー(英国仕様)

ミニに限っては需要が高いらしく、比較的ローコストでBEV化できるという。納期も他のモデルより短いらしい。今回試乗させていただいたクルマは、英国のスモールカー・ビッグシティ社によってオーダーされたものだそうだ。

ちなみにこの会社は、クラシック・ミニでロンドンを観光する企画を展開している。所有するミニのすべてを、これからBEVへ改造する予定だという。

観光企業がこんな計画を組むほどだから、他のモデルのように驚くような金額を準備する必要はない。実施規模が大きいほど、コストは下がっていく。といっても、良好な状態のベース車両とは別に、3万2000ポンド(約534万円)の改造費が必要ではある。

ボディやサスペンション、インテリアのレストアが必要な場合は、さらに費用は膨らむ。幸い、BMCミニは錆びやすいことで有名なクラシックカーではないけれど。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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