9歳女児はなぜ「車外放出」されたのか? フェラーリとスズキ・ワゴンR事故 原因を取材 広島・福山市
公開 : 2022.07.03 06:25
大きく報道されたフェラーリとスズキ・ワゴンRの右直事故。女児はなぜ車外に投げ出されたのか、原因などを取材しました。
信号機のある交差点での事故
2022年6月18日夜、広島県福山市霞町1丁目にある交差点「まなびの館ローズコム西」で9歳女児が死亡する衝突事故が発生した。
直進するフェラーリF8トリブートと右折してきたスズキ・ワゴンR(初代スティングレー)とのいわゆる「右直の事故」である。
衝突の衝撃で63歳の祖父が運転するワゴンRに乗っていた小学4年生(9歳女児)が車外に投げ出された。
病院に搬送されたが2時間半後に死亡が確認されている。
祖父も骨盤骨折などの重傷を負ったが命に別状はない模様。
フェラーリのドライバーにけがはなかった。
事故は発生当初、数多くのメディアで報道された。ニュースのタイトルは「フェラーリと軽乗用車」としているところがほとんどで、わずかに「スポーツカーと軽自動車」と名前を伏せたものもあった。
フェラーリやポルシェ、ランボルギーニ、メルセデス・ベンツ、マセラティなどの高級車は固有名詞を出されることが多い。
一方、国産車ではたとえ高級車でも車名が出ることはほとんどない。
理由は明白で「スポーツカー」よりも「フェラーリ」、「ポルシェ」の方が注目を集めるからである。
また、テレビの場合は国産自動車メーカーをはじめスポンサーへの配慮も関わってくる。
今回の事故。事故の様子を伝えるニュースの第1報で女児については「亡くなった」事実だけが伝えられた。
知人のテレビ制作関係者にも聞いてみたが、それ以上の情報は回ってこなかったという。
わずかに「全身を強く打って死亡」との報道もあった。
この「全身を強く打って」とはほとんどの場合、車外に放り出されて路面に全身を叩きつけられることを意味している。
なぜ小学生は車外放出された?
事故を報じるニュース動画や写真を見るとフェラーリ側の損傷はかなり大きく見えた。
とはいってもフロント部分が激しくつぶれているのは衝撃を吸収してキャビン(乗員が乗る部分)を護る構造だからである。
実際、フェラーリのキャビンはほとんど変形もなくドライバーにもけがはなかった。
一方、ワゴンR側はどうだろうか?
ボディの左側面は衝突の衝撃で大きく凹んでいるものの、横転もしておらず、衝撃で遠くに弾き飛ばされた状況でもない。
写真や映像から見る限り、衝突事故が発生した交差点で事故後も正立の状態を保っていたと思われる。
その後の第2報では「小学生女児は車外に投げ出されて全身を強く打って死亡」と報道され始めた。
横転もしていないのに、車外に投げ出されるのは衝撃から身体を拘束する(守る)シートベルトがなかった可能性が高い。
では、シートベルトをしていれば助かったのか?
正しい位置にベルトが掛けられていれば助かった可能性が高いが注意すべき点がある。
日本の小学生はほとんどが身長150cm以下なので、シートベルトだけでは正しい位置とはいえないからだ。
日本を含むほとんどの自動車メーカーでは「身長145cm以上の大人用ダミー」を使って安全性を評価しており、子どもがシートベルトを使えるのは身長150cm以上となる。
日本も採択しているチャイルドシートの安全基準(国連欧州基準UN/ECE R129)においては、ジュニアシートは身長150cmまでの子どもが安全に使える構造であることが必須条件だ。