電力不足にも対応 中古バッテリー活用のEV充電ステーション 電力の自給自足も可能
公開 : 2022.07.05 18:05
欧州でEVの普及が進む中、電力網への負担を低減して安定的な電力供給を実現するために、中古のEV用バッテリーを再利用する試みが増えています。
寿命迎えた駆動用バッテリーを再利用
欧州を中心にクルマの電動化が急速に進む中で、最も疑問符がつきやすい課題の1つは充電インフラだろう。
民間企業や政府は、100年かけて進化した給油所ネットワークのように、アクセスしやすく信頼性の高い急速充電ネットワークを構築しようと懸命に努力しているが、その前に大きな課題が立ち塞がっている。
道路を走るEVの増加に対応するため、十分な数の充電器を備えた公共施設を展開することも重要だが、その地域の電力供給もそれに追いつかなければならない。ある場所に新しい充電器を設置しても、それに合わせて新しい電力供給網があるとは限らない。そこで、EVの電源として耐用年数を迎えた中古バッテリーは、大きな変化を生み出す可能性がある。
ありがたいことに、改善のアイデアも出てきている。英国では6月15日、充電ハブ「Monks Cross HyperHub」がヨーク市にオープンした。ABBの175kW超急速充電器4基と50kW充電器4基、そして7kW充電器30基が設置されている。このハブは、ヨーク市とEvoEnergy社の共同開発によるもので、175kW充電器は、将来的に高性能BEVが普及した際に350kWにアップグレードすることが可能だ。
Monks Cross HyperHubで使用する電力は、主に電力網から得られる再生可能エネルギーである。しかし、ソーラーパネル付きの屋根が利用者を雨から守るとともに、そこで発電された電力がテスラの蓄電池「パワーパック」に蓄えられ、地域の電力ネットワークを補強する。ヨーク市には、今年中にさらに2つのハブがオープンする予定だ。
一方、アウディはすでにドイツ・ニュルンベルクで、自宅で充電できないユーザーを対象とした「都市型充電コンセプト」の試験運用を成功させている。この充電ハブには6基の超急速充電器が設置され、事前に予約することができる。従来のシステムと異なるのは、電力を自給自足できることだ。
EVから回収したリチウムイオンバッテリーが再利用されており、キューブ型のコンテナに合計約2.45MWhの蓄電容量を備えている。使用するのはグリーン電力のみで、比較的小規模な200kWで地域の電力網からトリクル充電を行い、電力供給の負荷を軽減し、速度低下を回避する。また、屋根に設置された30kWの太陽光パネルも蓄電に寄与している。
ルノーによると、リチウムイオンバッテリーの寿命は10~15年。その後は、容量の75%程度を維持するため、充電サイクルが穏やかな充電ハブで再利用した場合、あと10年は大丈夫だろう。そして、寿命が来た後は、フォルクスワーゲンのようなリサイクル工場で、レアアースなどの素材を取り出すことができるようになる。