先入観を塗り替えるSUV ランドローバー・ディフェンダー 90(最終回) 長期テスト

公開 : 2022.08.07 09:45

いま最も注目度の高い英国製SUV、ディフェンダー。未踏の荒野から市街地までをカバーする実力を、長期テストで確かめます。

積算7171km 条件付きでオススメSUVの1台

都市部に住む現代人にとって、新しいランドローバーディフェンダー 90が理想的なクルマだとはいいにくい。それでも、いくつかの弱点を受け入れるという前提で、筆者はオススメしたいSUVの1台に並べたい。

決して悪いクルマではない。極めて有能で、過酷な条件でなくても、その実力には唸らされるものがある。

ランドローバー・ディフェンダー 90 3.0インジニウムD250 MHEV HSE(英国仕様)
ランドローバー・ディフェンダー 90 3.0インジニウムD250 MHEV HSE(英国仕様)

オフロードでもオンロードと同様に快適に運転でき、長距離クルージングも安楽。長期テストでの平均燃費は10.7km/Lで、車格を考えればディーゼルなら経済的。車内パッケージングも優れている。

すべての点で、初代ディフェンダーの弱みを克服している。とはいえ、不満がないわけではない。

大きなボディサイズは、現代基準では手に余る。フォルクスワーゲン・ゴルフのユーザーが見ても小さいと感じるほど、90の荷室は限定的で、英国でも価格はかなり高いと感じる。

リアシートは完全にフラットにならず、大型犬をゲージに入れて、一緒に自動車旅行することも難しい。ボディの長い110なら、専用アイテムが用意されているのだけれど。

実際、英国の読者には、ディフェンダー 90を検討したものの諦めたという人が少なくない。それでも筆者は、すっかりこのクルマが気に入ってしまった。長期テストは今回が最終レポートとなるが、とても寂しいと感じている。

素晴らしい印象の3.0L 直6ディーゼル

ディフェンダー 90には唯一の個性があり、派手さはないものの存在感があり、すべてのクルマ移動を特別なものにしてくれる。完璧とまではいえないものの、乗るたびに幸せな気持ちになった。

この魅力は、英国編集部のマット・プライヤーが、クラシカルな要素とオフロード的な機能をモダンなディフェンダーに融合させた、巧みなオプション選択も影響している。ハイエンドのHSEグレードの価格は、更に15%ほど増していたが。

ランドローバー・ディフェンダー 90 3.0インジニウムD250 MHEV HSE(英国仕様)
ランドローバー・ディフェンダー 90 3.0インジニウムD250 MHEV HSE(英国仕様)

スチールホイールという選択は、英国の読者の間では賛否が別れた。筆者がカウントした限り、アルミホイールを好む人が多いようだが、筆者は嫌いではない。

ちなみに、現在のランドローバーは生産が追いついておらず、より価格の高いモデルを優先的に販売するように動いている。ノンコストで選択できるスチールホイールは、英国では今のところ選択できないらしい。

筆者なら追加料金を払ってでも、装着させたいところ。少数派だとは思うけれど。

長期テストのディフェンダー 90で素晴らしい印象を残してくれたのが、3.0L 直列6気筒のディーゼルターボ・エンジン。2.2tの車重があるSUVに、0-100km/h加速8.0秒という動力性能を与えてくれる。

瞬発力だけでなく、混雑した市街地から田園が広がる郊外まで、スムーズに生み出される豊かなトルクにはいつも感心させられた。むしろ、この能力の方を評価したい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジム・ホルダー

    Jim Holder

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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