確信犯か、勘違いか 電動キックボード「免許不要」はまだ先 新ルールが危険走行を助長?
公開 : 2022.07.21 05:45
改正道路交通法の施行はまだ先。しかし、免許不要で乗れるとの勘違い続出。電動キックボードの新ルールを解説します。
衆議院で「可決」されただけ……
電動キックボードに関する新しいルールは「特定小型原動機付自転車に関する改正道交法」として2022年3月4日に閣議決定された。
その後4月19日には衆院本会議で可決・成立している。
ここで重要なのは「可決・成立」しても、「施行」はまだ先で2024年4月頃をめどにしているということ。
なぜかかん違いして「電動キックボードが免許不要で乗れるようになった!」と喜んでいる人たちもいる。
現行の電動キックボードに関する法律では、道路交通法でも、道路運送車両法でも原動機付自転車(以下、原付)と同様の扱いとなる。
電動キックボードを運転するには原付以上の免許が必要で、ヘルメット着用も義務づけられている。そして走行できるのは「車道」のみ。
ヘルメットやナンバー(番号標)のない原付が歩道を走っていたら多くの人は驚くだろうし、それが違法な行為であることがわかる。
しかし現在は、電動キックボードがヘルメット無し、ナンバー無しで歩道を走っていても驚く人はほとんどいない。
原付と電動キックボードは同じ扱いだということがまったく周知されていないからだ。
この状況で改正道交法が成立したというニュースが目に入るようになって、ますます混乱する人が増えている。
さらにもう1つ、混乱させる理由がある。
経産省主導の「産業競争力強化法に基づく新事業特例制度による電動キックボード」(以下、特例電動キックボード)」の存在である。
これはLUUPに代表される「特例事業者によるシェアキックボード」で、都市圏を中心に急激に増えており、最大手のLUUPの会員数は数万人レベルだ。
改正道交法でどう変わる?
特例制度は電動キックボードを普及させるためのものなので、原付の扱いではなく、「小型特殊車両」として扱っている。
速度は15km/h以下に制御されているが、小型特殊扱いなのでヘルメットは不要。
免許は小型特殊以上が必要で原付免許だけでは運転できない。
しかし、あくまでも「車両」であるため歩道走行は横断歩道含めて禁止されており飲酒運転ももちろん禁止だ。
ただし実際には歩道を走る、横断歩道も電動キックボードに乗ったままわたる、飲酒運転をするなど道交法違反の特例電動キックボードは頻繁に見かける。
整理すると、現在日本の道路を走る電動キックボードには、(1)原付扱いの電動キックボード、(2)小型特殊扱いの電動キックボードの2種類が存在する。
この2つに新たに2024年4月頃をめどに加わるのが以下。
(3)20km/h以下なら免許もヘルメットも不要、6km/h以下なら歩道(自転車通行帯がある歩道)も走れる電動キックボード
改正道交法を詳しくみてみよう。
電動キックボード等に関する改正道交法の概要(施行は2024年4月頃めど)
(1)電動キックボードは原則として車道や自転車専用通行帯を通行
(2)最高速度が20km/h以下に制御され、長さ190cm×幅60cmに収まる車両を「特定小型原動機付自転車」(電動キックボード)と定義する
(3)上記(2)のうち最高速度6km/h以下に制御されている車両は例外的に歩道などを通行可能(自転車通行可の歩道に限る)。ただし、歩行者扱いになるわけではない。
(4)電動キックボードの運転には、運転免許が不要(ただし16歳未満は運転禁止)。ヘルメット着用は努力義務。
(5)交通反則通告制度と放置違反金の対象となり、危険な違反行為を繰り返す者には講習の受講を命ずる。
なお、最高速度20km/h以上の電動キックボードに関しては改正道交法施行後もこれまでと同様で原付と同じ扱いとなる。
とくに大きく変わるのが最高速度20km/h以下、同6km/h以下に「制御された」電動キックボードである。
ここでいう「制御された」とは、乗る人の操作で簡単に設定速度を変えられない仕様のこと。
設定速度が簡単に変えられる電動キックボードは違法車体とみなされ取り締まりの対象になる可能性も出てくる。