M誕生50周年 BMW M5 CSでニュルブルクリンクへ 創設者と開発本部を尋ねて 中編

公開 : 2022.08.13 09:46

BMWの高性能部門、M社が誕生50周年。英国編集部がM5 CSを味わいつつ、その起源を訪ねるべくドイツへ向かいました。

BMW M1の後継モデルは実現するのか

BMW M1の開発では、経営に苦しむランボルギーニとパートナーを組んだものの、上手く進まず、ドイツのバウア社と再調整。BMWはM88型と呼ばれる直列6気筒エンジンを設計するが、生産は遅れ、ワンメイクのプロカー・レース開催に留まっている。

ヨッヘン・ニアパッシュ氏は1981年にBMWモータースポーツ社を去るが、彼のアイデアにはやり残しがあったようだ。「わたしがBMWを離れた時点で、優先されていたのはF1。M1の存在を忘れたかのようで、間違いだったと考えています」

BMW M1(1978〜1981年/欧州仕様)
BMW M1(1978〜1981年/欧州仕様)

現在のBMWにも、M1は存在しない。ポルシェ911に対抗できるミドシップのMモデルは、多くの関心を集めるだろう。実際、同社は何度か後継モデルに取り組んではいる。

1993年、BMWモータースポーツ社はBMW M社へ名称が改められる。その後トップに就任したアルバート・ビアマン氏は、2009年にメルセデス・ベンツが発表したSLS AMGに対峙するモデルを切望していた。

「技術的な観点からは、充分なモノを持っています。可能なら取り組みたいですね」。2011年、AUTOCARの取材でビアマン本人も語っている。後任のカルステン・プライス氏も、その可能性を否定はしていない。

M1の復活には、アルピナも取り組んでいた。ドイツ・ブーフローの倉庫には、プラグイン・ハイブリッドだったi8の、アルピナ仕様の部品が残されている。エンジンも3気筒より大きいものが検討されていた。お披露目されることはなかったが。

モータースポーツとMは切り離せない

BMW M社は、50周年の節目に新モデルを発表した。「これまでで最もパワフルなMモデル」で「BMW M1以来となる、記念すべき独立モデル」だと主張された。

「彫刻的な面構成」「華やかなボディライン」「ハイパフォーマンス・セグメントを刷新」といった、意欲的な言葉が並ぶ。スーパーカーのように聞こえるものの、実際は750psを発揮するXM。バッテリーEV(BEV)のSUVだった。

BMW M5 CS(英国仕様)
BMW M5 CS(英国仕様)

BMW M社の舵取りは、2021年にオランダ出身のフランク・ヴァン・ミール氏へ託されている。技術者として経験を積だ彼は興味深い人物で、クロスオーバーに対して肯定的といえる。恐らく、現実的な考えのうえで。

責任ある自動車メーカーの経営者として、彼はXMを論理的なモデルだと説明する。現在のBMW M社は、多様化してもいる。今後、ラインナップはすべてハイブリッド化される。どこかの時点で、BEVへ切り替わるはずだ。

BEVサルーンのi4 M50は速く、テールスライドも可能。だが、本物のMモデルではない。従来のアグレッシブさや、流れるように軽快な敏捷性は備わっていない。BEVのM3は、どんなモデルになるのだろう。

「2030年代が始まろうとする頃に、ハイブリッドは正しい答えでしょうか。レースを戦えるほど高性能な、BEVパワートレインの登場を期待するのでは?」。とヴァン・ミール氏は答える。

モータースポーツとMは切り離せない。「レースが不必要だと考えるのは、間違いです。高性能モデルを生み出すには、レースでの戦い方を知らなければ難しい。単なるロゴになってしまいます」

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    オルガン・コーダル

    Olgun Kordal

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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