リラックスできるミニバンBEV シトロエンe-ベルランゴへ長期試乗 航続距離280km

公開 : 2022.08.02 08:25

ファミリー・ワンボックスまでBEV化の時代。英国編集部が数ヶ月を通じて、その使い勝手を確かめました。

BEVのミニバン、e-ベルランゴ

英国では、バッテリーEV(BEV)が着実に増えている。急速充電器のそばでは、完了を待つ友好的なユーザー同士が、会話を楽しむ様子も時折見かける。不満だらけの、英国の充電インフラについて盛り上がっているようでもあるが。

ジャガーテスラだけでなく、キアポールスターなど各ブランドのユーザーが、価格や航続距離、充電時間、動力性能などを比較していることもある。自分以外のクルマにも興味を抱いている人にとっては、情報収集できて楽しいのだろう。

シトロエンe-ベルランゴ M(英国仕様)
シトロエンe-ベルランゴ M(英国仕様)

筆者はシトロエンのミニバン、e-ベルランゴ Mを数か月お借りしている。AUTOCARの姉妹メディアの企画として。だが、このクルマに関心を抱いてくるドライバーが少ないことに、以前から寂しさを感じていた。

充電ケーブルを接続すると、驚いた表情を見せる人も少なくなかった。BEVだと知られていない様子。駆動用バッテリーの容量や航続距離を聞かれることは、殆どなかった。

そんなある日、日産のBEVミニバン、e-NV200 コンビに乗ったカップルと出会った。西へ向かう高速道路、M4号線のサービスエリアで。

彼らは、クルマには大きな荷室が必要だったと話す。数年前は、英国で販売されているミニバンでBEVを選べたのは、e-NV200だけだった。40kWhの駆動用バッテリーで、199kmの航続距離がうたわれていた。

駆動用バッテリーは50kWh、航続距離は280km

グレートブリテン島の西部、ウェールズ州に住む2人は、定期的にロンドンの家族を訪ねているらしく、途中のサービスエリアで充電しながら自宅へ帰るのだという。その日も、帰路だった。

現在はオプションで50kWまで増やせるが、数年前のe-NV200の急速充電能力は22kWと低い。充電が完了するまで、ゆっくりコーヒーとビスケットを口にしながら、休憩するのがお決まりだと教えてくれた。

シトロエンe-ベルランゴ M(英国仕様)
シトロエンe-ベルランゴ M(英国仕様)

隣に並んだe-ベルランゴに、そのカップルは興味を抱いた。最初に男性が、適度なボディサイズと、大きな荷室へ感心したようだった。続いて、待っていた質問が飛んできた。「駆動用バッテリーの大きさはどのくらいですか?」

筆者は少し誇らしげに、駆動用バッテリーが50kWhで、航続距離はWLTP値で280km、急速充電は50kWまで対応することを話す。彼は驚いた様子だった。ロンドンからウェールズまで、どれだけ短時間に移動できるかを計算し、感心していた。

その日以来、e-ベルランゴへの筆者の印象は一層良くなった。ワンボックス型のボディで、実用性は評価していた。一方、高速道路では210km程度に短くなる航続距離が弱点だと感じていたのだ。冬場は160km近くまで悪化してしまう。

本来、シトロエン・ベルランゴは実用性重視のモデル。160km以上離れた目的地を目指す場合、充電計画を立てなければならないというのは、大きな足かせといっていい。しかも、充電器は故障中のこともある。

最新のBEVでも、充電の心配から開放されたわけではない。とはいえ、航続距離はe-ベルランゴより遥かに長い。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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