高速は快適に・峠道は軽快に メルセデス・ベンツ190(W201) 英国版クラシック・ガイド 前編

公開 : 2022.08.13 07:05

ドイツの名門を苦境から救った、W201型の190クラス。英国編集部は魅力的なネオクラシックだと評価します。

人気を後押ししたホモロゲーション・モデル

経営的に厳しかった1980年代のメルセデス・ベンツを救ったのが、小さな190クラスBMW 3シリーズに対する、シュツットガルトからの回答といえた。

W123と呼ばれた当時のミディアムクラスに並ぶ品質や車内空間を、コンパクトなボディに実現させていた。加えて、シャープなスタイリングは空気抵抗に優れていた。

メルセデス・ベンツ190クラス(W201型/1982〜1993年/英国仕様)
メルセデス・ベンツ190クラス(W201型/1982〜1993年/英国仕様)

リア・サスペンションは新開発の5リンク式で、フロントはストラット式。加減速時に姿勢を保つアンチスクワット技術を採用し、優れた乗り心地と操縦性を両立していた。ライバルを凌駕したといっていい。

洗練性も高く、車内ではエンジン音が殆ど聞こえない。キャブレターの190に加えてインジェクションの190 Eも投入され、充分な動力性能と、高いギア比を活かした燃費の良さも強み。視認性と空力性に配慮された、左右非対称のドアミラーも新鮮だった。

ボディサイズや優れた質感、強固なボディ構造を考えれば、車重は驚くほど軽い。反面、亜鉛メッキとワックス封入のボックスセクションで防錆性に配慮されていたものの、薄い鋼板部分は思いのほか錆びやすい。

190クラスの人気を後押ししたのが、ツーリングカー・レースに向けたホモロゲーション・モデルの追加。保守的なブランドイメージを打破したのが、2.3-16とサブネームが振られた高性能仕様だった。

エンジンには名門コスワースの手が入っていたが、あえてモデル名には記されていない。それも、メルセデス・ベンツのコダワリの1つといえた。

6気筒エンジンを搭載した2.6も

この190 E 2.3-16は、製造開始と同時にほぼ完売という高い支持を英国では集めた。自然吸気の4気筒エンジンには、16バルブのツインカムヘッドと電子制御の点火システムを搭載。クロスレシオが組まれたゲトラグ社製5速MTとペアを組んだ。

リアにはリミテッドスリップ・デフを採用し、フロントブレーキにはベンチレーテッド・ディスクが奢られている。サスペンションは、リアにハイドロニューマチック式を採用するなど、全面的に手が加えられている。

メルセデス・ベンツ190クラス(W201型/1982〜1993年/英国仕様)
メルセデス・ベンツ190クラス(W201型/1982〜1993年/英国仕様)

速さは鮮烈ということはなかったが、操縦性は秀抜。乗り心地も犠牲にはなっていない。

一方、190 E 2.3-16で不満を買ったのが高い価格。より高速なBMW M535iより、当時で2500ポンドほど高かったのだ。

さらにライバルのBMW 3シリーズには、上級グレードに6気筒が載っていた。それへ対抗するように登場したのが、190 E 2.6。燃費性能を大きく損なうことなく、パワフルさとスムーズさを獲得。6気筒の上質なコンパクトサルーンとして、しのぎを削っている。

多売となった190クラスだが、その多くにはオートマティックが組まれている。マニュアルが選ばれたのは、先出の高性能仕様が中心だった。現在の英国の中古車市場を見渡しても、殆どがATとなっている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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